大阪・ミナミで営業を続ける唯一の茶屋「たに川」(大阪市中央区島之内2、TEL 06-6211-2219)が5月9日、11年ぶりに芸妓(げいこ)のお披露目を行った。
大阪にはかつて「花街(はなまち)」と呼ばれる歓楽街があり、1935(昭和10)年ごろの芸妓在籍者数は北新地500人、新町900人、堀江500人、南地(今のミナミの中心部)2000人で、南地は日本最大の花街としてにぎわった。大阪万博の頃をピークに減少し、現在は北新地に6人、南地に1人となった。同店は1969(昭和44)年に開業。3部屋の個室を備え、南地で営業を続ける唯一の茶屋として現在も営業を続けている。
茶屋は芸妓を呼んで客に飲食をさせる店で、料亭と違い厨房(ちゅうぼう)がない。同店では客の好みに応じてお好み焼き、ラーメン、カレーなど幅広く取り寄せる。利用に決まりはなく、同窓会、マージャン、稽古場など要望に応じてアレンジする。芸妓は舞踊を担当する立方(たちかた)と三味線や鳴り物を担当する地方(じかた)に分かれる。
今回は芸妓として活躍する八重鶴(やえづる)さん、芸妓見習いの玉幸(たまこ)さん、多美鶴(たみづる)さんの3人がお披露目を行い、同店の芸妓は3人に。3人の中で一番若い20歳の玉幸さんは「緊張感よりも楽しみが上回っている」と話し、多美鶴さんは「私は緊張する性格だが、お客さんとたくさん触れ合ってすてきな芸妓になりたい」と意気込みを語った。八重鶴さんは「立方の2人が出てきてこれから一緒に仕事ができると思うとうれしい」と喜びを語った。
若主人の谷川恵さんは「この11年間で芸妓志望の子は何人もいたが、修業がつらくてみんな辞めてしまった。今回のお披露目で地元の芸妓が誕生したのが本当にうれしい。令和という時代にも花街文化を伝えていきたい」と意気込む。