スナック菓子を使った作品で注目を集める現代美術作家の河地貢士(かわちこうし)さんの個展「a HOSPICE(ホスピス)」が9月18日、大阪・新町のギャラリー「studio J(スタジオJ)」で始まった。
河地さんは1973(昭和48)年岐阜県生まれ。1996年に名古屋芸術大学美術学部デザイン科造形実験コースを卒業後、アートディレクター兼デザイナーとして本の装丁やデザインを手掛ける一方、スナック菓子「うまい棒」に仏像を彫った「うまい仏」や漫画雑誌を土壌にカイワレを栽培する「まんが農業」など、ユニークな作品を発表し国内外から注目を集めている。
東京を拠点に活動する河地さんにとって、大阪での個展は同展が初めて。「『どうやって笑わせよう』と考えながら準備を進めた」という展示作品は全17点。「うまい仏」「まんが農場」などの立体作品をはじめ、「ベビースター」を星(スター)型に集めて撮影した写真、映像作品やドローイングなど、さまざまな手法を用いて独特の世界観を表現する。
3年程前にスナック菓子を作品に取り入れ始めた河地さん。そのきっかけとなった「うまい仏」は、「円空仏」で知られる円空への一種のオマージュ作品だという。「その辺の棒切れに彫っていた」という円空のエピソードにちなんで、棒きれに見立てた「うまい棒」をリューターと手の微調整で仏像に仕上げていく。1体ずつ異なる仏像の表情は、「(10種類以上ある)うまい棒の味、持ったときの感触、においから感じたものを表現している」という。同展のために制作した8体の新作の中には、大阪にちなんだタコヤキ味の「うまい仏」も姿を見せる。
作品の「斬新さ」や「面白さ」が目を引くが、タイトルに起用した「ホスピス」も同展の重要なテーマ。河地さんにとってのホスピスとは、「無私の献身と歓待(=ホスピタリティー)が行われる場」。割れたポテトチップスに金継ぎを施し、バラバラの「ベビースター」を一つにつなぎ合わせた「Embalming(=遺体保全)」シリーズは、壊れたものを修復する「優しさ」を、床一面に敷いた蛍光紙の上にスナック菓子を並べ、紙に広がっていく「油の染み」を展示する「Beautiful Stain(=美しい染み)」や、毛玉取り器で集めた色とりどりの毛玉の「くず」を印象画風に展示する「毛玉のコンポジション」は、普段嫌がられるものを作品にすることで「失敗・だめだと思ったものも、そうでもないじゃない」という「肯定さ」を表現した作品。
自身の作品について、「敷居の高いアートじゃなく、普段生きている中で感じる感覚を再現したアート」と河地さん。スナック菓子など身近で手軽な材料を使うことで、「見る人の心にすっと入る『ため口』の表現ができれば」と話す。「パッと見分からない作品も、じっくり見て自分なりに想像してもらえたら」とも。
開廊時間は13時~19時。日曜・月曜・火曜定休。10月23日まで。