大阪・アメリカ村の雑居ビルの一室に夜間診療クリニック「OWL(アウル)クリニック」(大阪市中央区西心斎橋1、TEL 06-6282-7987)ができて1年4カ月ほどがたつ。
精神科を中心に、内科、アンチエイジング科の診療を行う同クリニックは2014年7月、片上徹也さん(31)が開設した。片上さんは奈良県立医科大学卒業後、複数の病院勤務を経て、現在は大規模病院に常勤医師として勤務するほか、2カ所の病院で非常勤医師を、看護専門学校で非常勤講師も務める。
精神科、心療内科の専門医として数多くの患者を診察するうち、精神疾患を抱えている人は朝や昼間の外出が難しい一方、夜間診療のクリニックが少ないことに気付いた。「夜間診療をしないと受診できない診察難民がいる。そうした人々に向き合うことが真の医療」と考え、若者の多いミナミ周辺で夜間診療を行うクリニックの開設を思い付いた。
ところが2011年3月、クリニックの開設準備を進めていた片上さんを病が襲った。くも膜下出血で倒れ、一命を取りとめたものの脳の6分の1に障害が残り、左半身まひとなった。懸命なリハビリの結果、2年後には非常勤医師としての勤務を再開、そして予定より3年遅れで同クリニックを開設した。
アメリカ村という場所柄、患者の平均年齢は25歳。会社員、アパレル店員、飲食店員、風俗関係者など、女性が7割近くを占める。1日あたりの診察患者は平均8人。「商売として考えたら全然もうからない」と片上さん。フクロウを意味する「アウル」と名付けたのは、夜行性であることに加え、世界各国で守り神として認識されていることから、「クリニックが患者にとって夜の守り神になれば」との思いから。現在、精神科、心療内科で22時30分まで診察を行っているのは大阪府内で同クリニックだけという。
診察時間は19時~23時。予約制。今後はデイケアの開設や、梅田エリアへのクリニックの開設も考えているという。