-昨年の冬、アメリカ村で行われた「オールナイトゴミ拾い」を取材させていただきました。
11月に心斎橋で行った「オールナイトゴミ拾い」の時に取材に来ていただきましたね。オールナイトゴミ拾いは9月に梅田で行ったのが初めてで、その後10月にも梅田で行って、3回目が11月の心斎橋でした。
-あの時は50人ぐらいが集まってゴミ拾いをされていましたね。
50人ちょっとでしたね。学生だけではなく社会人の方も来られていました。年齢層は18~35歳ぐらいまでで、結構幅広い方が来られていました。
-なんば経済新聞以外の取材も来ていましたね。
朝日新聞さんには大きく記事を出していただいてびっくりしましたね。その結果、反響は結構ありました。例えば、以前にあるプレゼンをさせていただいた企業の方がその記事をご覧になって、「もう一度改めて話を聞かせてもらえないか」と連絡があったりして…。いくつかそういうことがありましたね。
朝日新聞の記事はインターネットでも配信されているので、メールも結構もらいました。大阪の方からは「大阪市民として誇りに思います」っていうメールをもらったり、東京の方からも「記事を見ました」っていうことでメールをもらったりと、50件近く来ましたね。スマイルスタイルのブログにもたくさん書き込みがありました。
-ゴミ拾いの参加者は、どのようにして集まったんですか?
ミクシィとブログで呼びかけました。ミクシィでは大阪に関連したコミュニティーに書き込みをしたりして、それに興味を持った人が集まってくれました。
-ゴミ拾いは、定期的に実施されているのですか?
週末に不定期的に各地でゴミ拾いを行っているんですが、それとは別に1カ月に1回、深夜にオールナイトでゴミ拾いを行っています。
12月は心斎橋だったんですが、その時は雨が降っていたので中止にしようと思っていたんですけれど、「心斎橋の商店街にはアーケードがあるじゃないか」っていう参加者の声があったので(笑)、アーケードの下でゴミ拾いをやりましたね。43人ぐらい集まって…。
1月も心斎橋でやりました。寒い時期なのであまり集まらないかなと思っていたんですけど、毎回楽しみにしてくれている人もすごく多く、「ゴミ拾いの日にはバイトを休んで参加する」っていう方もいたりして、過去最多の60人ちょっとが集まりました。どんどん口コミでも広がっているし、メディアにも少しずつ出ているし、「まだ参加したことはないけど、いつか参加したい」と思ってくれている人も多いみたいですね
心斎橋で「オールナイトゴミ拾い」-社会起業家目指す若者グループが企画
-スマイルスタイルは、ゴミ拾い以外にはどのような活動をされていますか?
なんば経済新聞さんにも取材に来ていただいた「今日だけは僕の公園プロジェクト」という活動を全国的に広げていきたいと思っています。いろいろな表現活動をしている若者を応援する活動なんですが、先日はアメリカ村の三角公園を1日だけ「平井公園」っていう名前に変えて、平井君という写真家に来てもらってイベントを行いました。
新しい公園を作るのは難しいんですけれど、今ある公園のコンセプトを変えることはできるので、「今日だけは自分のライブ会場にできる」とか「今日だけは学校にできる」とか、そういうテーマを20個ぐらい考えています。企業さんの協賛がもらえれば、アメリカ村の三角公園だけじゃなくて、いろいろな場所でシリーズ化して活動をしていきたいと思っています。
アメ村で「今日だけはぼくの公園」企画-アーティスト名が公園名に
-塩山さんの生い立ちについてください。
兵庫県尼崎市に生まれた僕は、活発で負けず嫌いで、幼稚園の頃からサッカーばかりしていた子どもだったんです。小学1年生の時は学校が大好きで、朝8時半までに学校に行けばいいのに、6時に学校の門を登って登校していたぐらいで、誰よりも早く登校していましたね。勉強も100点を取らないと気が済まなくて…。
でも小学3年生になって担任の先生が代わって、その先生とうまくいかなくなったんです。そのころはまだ「不登校」という言葉もなかったんですね。学校に行くのが絶対で、反論もできなかった。でも3学期になっていよいよ爆発してしまって、朝起きると、体が40度ぐらいの熱を出すようになったんです。それで病院に行ったら「これは風邪じゃない。精神的に追い詰められているんだ」ということになって…。そのまま僕は小学校にほとんど行かなくて、中学校にも1回も行ってないですね。
-その後は?
その後、通信制の高校に通いました。1年目と2年目はちゃんと通ったんですが、3年目になると自分にもやりたいことができてきて、大学に行きたいわけでもなかったから、高校は卒業しなくてもいいと思って…それで次の道に進むことにしました。政治家になるとか経営者になるとか、いろんな道があると思ったんですね。それで政治家のかばん持ちをやったりいろんな仕事をしたりしながら、勉強をさせてもらいました。
そして22歳になって、そろそろ自分で何かアウトプットしようと思うようになった。それで昨年、社会に対してメッセージを発信していこうと思って始めたのが、スマイルスタイルという活動なんです。
-スマイルスタイルを始めるきっかけは何だったんですか?
尼崎市には「メンタルフレンド」っていう制度があって、家庭教師の先生みたいな感じで週1回とか月2回とかで、不登校の子どもの所にボランティアの人が遊びに来てくれるんですね。小学4年生の時に僕の所にも24歳ぐらいの消防士のお兄ちゃんが遊びに来てくれて、サッカーとか山登りを一緒にしてくれました。そのお兄ちゃんから何か特別な言葉をもらったわけじゃないけど、自分は「こんなお兄ちゃんになりたい」と思ったことがあるんです。
「子どもは大人の背中を見て育つ」って言うけど、確かに子どもは、身近な大人の背中を見ることで、生きる希望とか、生きる価値とか、生きる姿勢とかそういったものを形成していくんだろうなと思うんです。子どもからしたら社会ってすごく大きいけど、社会って結局は大人の背中が積み重なっているようなもので、大人がゴミをポイ捨てしたら子どももポイ捨てするし、大人が差別したら子どももすると思うんです。
でも大人が優しくて魅力的で輝いていたら、子どもたちは学校の教科書がなくても、大人の背中を通して社会を見て、生きる希望とか、生きる夢とかパワーとかをいっぱいもらうと思うんです。勝手に、自然に、大人の背中からいっぱい感じるんです。感じることが種なんです。それが大人になったら花が咲くというか、開いていくと思うんですよ。
子どもってそうやって、大人の背中からかけがえのない色々なことを受け継いでいくものなんだろうなと思います。それが社会というものなんだと思う。スマイルスタイルの活動の原点はそういうものなんです。
-スマイルスタイルの活動の特徴は、どのようなところにありますか?
アルファベットにも大文字と小文字があるように、日本語にも大文字と小文字があると僕は思っています。大文字というのは「社会を変えよう」とか、そういった大きいことを言うことなんです。正論っていうか。大文字ほど、言葉って人の心には伝わらないんです。逆に小文字というのは、自分の身近な問題として捉えるというか、友達感覚で捉えるというか、主観的なところに響く、そういう言葉なんです。
人は誰でも、「格好いい」とか「お洒落」とか、そういう言葉に弱いじゃないですか。だから「ポイ捨てしたら格好悪い」とか「イジメほど最悪なことはない」とか、社会的にそういう空気があれば、誰もそんなことはしなくなるじゃないですか。国の法律とか仕組みとかを大文字でいくら変えたとしても、結局は人の意識を変えていかなければ、やっぱり何も変わらないと思うんです。
思いを「伝えたい」ということと、実際に「伝わること」って違いますよね。確実に伝えるためには、小文字の日本語じゃないといけないと思う。だからスマイルスタイルでは、大文字はできるだけ使いたくなくて、小文字を使って伝えていきたいと思っています。
-スマイルスタイルとしての活動を始める際に、何か問題はありましたか?
こういう社会的な活動って、昔からお金持ちの趣味的な部分があるじゃないですか。お金持ちの趣味って今は環境とかエコに向かっていってるんですね。お金持ちの人たちが環境とか教育とか、そういうころにお金を使おうとしていて、そういう流れになってるんです。
だからスマイルスタイルを始める時によく言われたのは「君らはまだ早いよ」と。こういう活動をしている人はみんな何かのプロフェッショナルだったり、お金持ちが趣味でやっていることなんだよと。だからまずしっかりと就職して実績や人脈を作って、30歳ぐらいになってからやったほうがいいよ、ということを言われたんですね。
ほかにも、「大阪ではこのような活動は難しいよ」と、そういう声も圧倒的だったんです。ビジネスとして成立しないと言われたんですね。
-そういう回りの声に対して、どう思われたんですか?
もちろん言ってることはわかるんだけど、僕には熱い思いがあったし、確信があった。社会的に意味のある価値を現場で起こしていく。そういうことは僕にもできるんやと。そしてその活動に本当に価値があるんなら、きっと誰かが共感してくれるはずだと…。
サッカーでもプロの試合って、感動するからお金を払うわけですよね。それと同じように、僕もプロになるんやと。だから誰かに「君たちの活動は必要や」と、そう言われるまで頑張るんやと。どんな形になるかわからないけど、誰かがお金を払いたいと思うまで価値を作ればいいんやと、そこまでの自信があったから始めたことなんです。
最初は資金もないし人脈もないから、まずは「ゴミ拾い」から始めていこうということでスタートしました。もちろんゴミ拾いをしたからといってゴミがなくなるわけではないけど、メッセージとして発信していかなければならないので、あえてアートなゴミ袋も使ったりして…。
今はいろんな人がどんどんスマイルスタイルに参加してくれているし、企業の方もどんどん興味を持っていてくれているけど、今後この活動をきちんと事業として続けていくには、やはり協力してくれる企業に対するメリットも必要になってくると思います。東京では既にこういった活動をやってる人がいることも知り、勇気をもらいました。もちろん「こういった社会的な活動は東京でしか成立しない」という人もいるけど、そんなことないと、大阪でもできるんだと思って、活動しています。僕にはそれができると確信しているから、絶対にそこまでなんとか持っていこうと思っています。