■道頓堀プールの概要
道頓堀プールは、大阪ミナミの中心地を流れる道頓堀川の戎橋付近の東西800メートルにわたり、川幅いっぱいの布函(ふかん)式(=箱状の布)の水槽を浮かべ、約1万トンの水道水を注入する「世界最長の遊泳用プール」。コンセプトは「すごい!きれい!きもちいい!」。
プール営業が行われる夏季には、一般利用ができる遊泳用プールのほか、競技大会の開催を目的とする「50メートルプール」を設置。「25メートルプール」では子どもたちを対象にスイミング教室も開く。プールサイドには、更衣室やシャワールーム、トイレなどの付帯設備をはじめ、照明や音響設備を整え、「都会の中の異空間」を目指す。
夏季以外の期間は「ウォーターステージ」として、毎晩イベントを開催。「一大エンタテイメントエリアとして世界中の人たちに興奮を与える」という。
■これまでの経緯
道頓堀プールの構想は、大阪府市統合本部特別顧問で元経済企画庁長官の堺屋太一さんが2012年1月、「大阪10大名物構想」の中の「最重点項目」と位置付け発表したことからはじまる。2012年7月31日には「ホテルメトロThe21」にマスコミを招き、堺屋さんが「
道頓堀プール化プロジェクト基本構想発表会」を開催。「世界驚愕規模」「長期の街興し」「高度クオリティの文化発信基地」の3つのコンセプトを提示した。
その後、2013年4月1日には地元関係者ら14人が発起人となり、準備会社「
道頓堀プールサイドアベニュー設立準備株式会社」(本店=大阪市中央区道頓堀1-7-22、事務所=大阪市中央区西心斎橋2-6-9 Ribera西心斎橋501、TEL 06-6211-0400)を資本金1,400万円で設立(10月10日現在、資本金2,300万円)。道頓堀商店会会長で、うどん店「道頓堀今井」社長の今井徹さんが代表取締役に就任し、事業計画やプールの詳細について取りまとめ作業を進めていた。
なんば経済新聞が2013年4月27日に行った、今井社長への単独インタビュー取材の中で今井社長は、「2014年の夏には、運営会社の資本金が最低1億円必要。(準備会社の設立からプール開業までに必要となる事業費30億円のうち)半分の15億円は、企業の出資や金融機関の借り入れという形を考えている。8月中には、具体的な計画を出せる」と説明。4月1日の会社設立に際して出されたプレスリリースでも、「事業参画企業や増資計画、事業の詳細については、2013年夏ごろをめどに取りまとめ、発表会を行う予定」としていた。
当初予定より少し遅れた2013年10月10日に、事業計画発表会が「スイスホテル南海大阪」で開かれた。今井社長が道頓堀プールの全体像について、設備計画、収支計画を含め、具体的に説明したほか、総合プロデューサーの堺屋さんが「技術的な問題、美的な問題、経済的な問題は大体クリアできた。実現すれば大きな効果が得られる。少なくとも2020年までには15日間の東京オリンピックより大きな経済効果が確実に出る」とコメントするなど自信を見せた。一方で資金計画については「年内には大企業3社、中小企業数社からの事業への参画または出資を得たい。来年中には事業費の約40億円を調達したい」とするに留まった。
■プールの計画
道頓堀プールは、現在は遊覧船が行き交うなど観光地として親しまれている道頓堀川と、その両岸に設置されている道頓堀川遊歩道「とんぼりリバーウォーク」の、日本橋~深里橋西側(西横堀川の手前)までの区間に設置する全長約800メートル、全幅約10メートルのプール(2012年7月31日の基本構想発表会では「可能な限り速やかにボードウォークを西に延長、プールの総長を1000メートルにするように努力する」としている)。
川幅いっぱい(12~15メートル)に、深さ1.1~1.4メートルの布函(ふかん)式(=箱状の布)の水槽を浮かべ、約1万トンの水道水を注入する「世界最長の遊泳用プール」。1つの布函は長さ30メートル程度とし、接合機(チャック)により全体を接合、一体のプールとする。布函は塩ビシートで作り、周囲に大型フロートを設置することで道頓堀川に浮かべる。布函の底辺内部などには硬質樹脂パネルを敷き詰め、床に安定感を持たせる。弾力性のあるフロートとキャンバスシート構造により、水流変化やねじれに柔軟に対応できるため、水流や干満差に対応できるという。
プールの大きさは、全長約800メートル、全幅約10メートル、水深1.2メートル、水量は約9600立方メートルで、定員は5,000人。プール両側のプールサイドウォークは片側8メートルで、うち外側の4メートル幅の部分は自由に通行ができる「自由歩行部」とするほか、プール側の4.75メートル幅の部分は「プールサイド」とし、さまざまな付帯施設を設ける。自由歩行部とプールサイドの間には「風の壁」と呼ばれる仕切り柵を設置、風の壁は映像投影スクリーンとしても機能する。
プールの出入り口は、総合入場口を2カ所想定、そのほかに12カ所の出入り口を設置する予定。入場者にはリストバンド型の「防水型プリペイドウォッチャー」(5,000円のプリペイド式)を事前に購入してもらう。代金の決済や受付の識別などを行え、入場料延長の精算や、プール施設内のロッカー識別、飲食時の支払いなどに対応するほか、プール施設の一時退出、再入場時の識別も可能。提携する近隣店舗での代金決済も行えるという。
布函は、プール営業期間開始前に設置、期間終了後は直ちに撤去できる構造とする。布函の下や側面には河川水が流れる。また大量の降水が予想される場合には、布函の最上流と最下流の隔壁を取り外し、プール内にも河川水が流れるようにする。水道水は毎週全量を入れ替える。夏季以外のプールの営業期間外には、プール設備を撤去し、水上ステージを展開。ステージ・シップを中心にイベントやパレードなどを実施する計画。「道頓堀を音楽・ダンス・ファッションなどの分野における新しい文化の発信地にして、日本有数の革新的な街にしていきたい」(堺屋さん)。
■プール周辺設備
プールサイドには、更衣室やシャワールーム、トイレなどの付帯設備をはじめ、照明や音響設備、映像を投影するスクリーンなどを整える。更衣室、シャワールーム、トイレ、パウダールームはユニット構造でフレキシブルに組み合わせられる構造にする。更衣室は幅3メートルのものを100ユニット設置、ロッカーは4000人分を設置する。
日本橋付近、戎橋付近または深里橋付近に大型ビジョンを設置、道頓堀プールで演じられる競技、祭事、舞踏を拡大映写するほか、年間を通じてコマーシャルやニュースを流すことで採算性を確保する。
道頓堀に面した建物のボードウォーク階(正面道路からは地階となる)で、耐水性を満たした店舗は、「プールサイド店舗」として登録し表示する。プールサイド店舗には、プールから上がった人々が水着のまま入れる耐水性のある内装、什器、商品を整え、プール利用者の利用を想定する。
プール営業期間外の9月中旬~6月上旬には、連日「船上パレード」を実施する計画。電気を動力とするステージ船を中心に、その前後に観客船を配置。ステージ船は全長20メートル、全幅5~7メートルで、楽屋を設置するほか、せり上がりステージ舞台を設置する。観客船は全長10メートル、全幅3.6メートルで、約40人が乗船可能。川の両岸には有料観客席を設置、船着場3カ所付近に500席程度を設けるほか、全体で2000席程度を設け、ステージイベントを観覧できるようにする。観覧料金は未定だが、観客船席、リバーサイド指定席、立見席に分けて料金設定する予定。
■動員計画
道頓堀プールは、入園料、競技の会場借料、広告掲示料、キャラクター販売益金、期間外収入、その他により、収益を上げる。
プールの営業は、6月最終土曜(2015年の場合、6月21日)から9月第一日曜までの約10週間。営業時間は10時~21時(入園は19時まで)で、豪雨時は休業する。入場料は、最初の1時間=2,000円、以降1時間ごとに1,000円(土曜・日曜・休日は割増しあり)。
水泳競技としては、男子、女子の超長水路水泳競技、遠泳リレーのほか、シンクロナイズドスイミング、水球などの開催を予定。8月後半の日曜に「世界泳ぎのマラソン選手権競技 女子決勝」「世界泳ぎの駅伝選手権競技(800メートル×4人)男子」を、8月最後の日曜に「世界泳ぎのマラソン選手権競技 男子決勝」「世界泳ぎの駅伝選手権競技(800メートル×4人)女子」を開催するという。
そのほか、船上パレード、クリスマスや年末年始の各種イベント、ラジコン船競技などのイベント開催などにより、年間100万人の入場者を目指す。