アメリカ村のギャラリーカフェ「digmeout(ディグミーアウト)ART & DINER」(大阪市中央区西心斎橋2、TEL 06-6213-1007)で現在、「『電信柱エレミの恋』キャラクター展」が行われている。
「電信柱エレミの恋」は、「下町に立つ1本の電信柱が抱く恋心と葛藤」を描いた、コマ撮りの人形アニメーション作品。昨年10月、東京都写真美術館(東京都目黒区)で「自主制作映画としては異例」の1カ月にわたる長期ロードショーが行われた同作は、「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」で「優秀賞」、日本のアニメーション界で最も歴史と権威ある「毎日映画コンクールアニメーション賞」の「大藤信郎賞」をダブル受賞し注目を集めている。
同作を手掛けたのは、映像作家の中田秀人さんが率いるアニメーション制作チーム「ソバットシアター」。美術予備校で同期だった井上英樹さんの原作を読んだとき、「殴られたような衝撃があった」という中田さんは、その思いを形にすべく、造形技師の松尾憲樹さん、細井浩和さん、増田成朗さんとともに8年の歳月をかけて完成させた。
監督・脚本・キャラクターデザインを担当する中田さんが頭に描いたイメージを、絵コンテやイメージ画で造形技師に伝え、話し合いながら1コマずつ作り上げていったという。「1日12時間作業しても、完成するのは数秒」という気の遠くなりそうな作業を長年続けられたのは、「実際には1日も同じ作業はなく、『毎日違い、毎日難しい』日々の積み重ねだったから」と振り返る。いよいよ完成を迎えた日、「この上ない幸福感」に包まれて帰り道を歩いていた中田さんは、「立ち並ぶ電信柱が口々にお祝いを言ってくれているような感覚」を覚えたという。
同展は、9月に関西(大阪は初)でも劇場上映されるのを記念して、作品に登場するキャラクターを展示するもの。毎回、会場に合わせて校正しているという展示内容。今回は人がゆったり過ごすことの多いカフェということを意識し、食事をしながらでも眺められる壁面の作品に絞って展示する。「映画の中の電信柱と人との不思議な距離感が会場でうまく再現され、面白い風景になっていると思う」と中田さん。
営業時間は11時~翌3時(土曜・日曜・祝日は24時間営業)。9月5日まで。