メキシコから来日中の気鋭作家、ウリエル・マリンさんの版画展「イポ」が現在、心斎橋のイタリアン&ギャラリー「CIRCO MITALI’(チルコミタリ)」(大阪市中央区心斎橋筋1、TEL 06-4708-3900)で開かれている。
1981(昭和56)年メキシコ南東部・ベラクルス州生まれのマリンさんは、現代の感覚と伝統技術を融合させた独特な世界観で注目を集める若手作家。2004年にベラクルス州立大学ビジュアルアート学部卒業。石版・銅版・木版画を中心としたグラフィックアート全般を手がけ、アメリカやイギリス、ドイツのギャラリーなど各地で展覧会を開催している。2005年には、作家仲間と共同で現代アートギャラリー「Arte Cocodrilo(アルテ・ココドリコ)」(現在移転準備中)と版画工房「Pata de Perro(パタ・デ・ペロ)」を設立。メキシコの現代アート・版画技術の普及に務めている。
「版画の原点に触れるため、日本にはずっと来たかった」と話すマリンさん。念願の初来日となる今回は、奈良のギャラリー「Studio HeadSpace」(奈良市)でのアーティスト・イン・レジデンス(アーティストを一定期間ギャラリーに招待し、滞在中の創作活動を支援する制度)期間を含む約1カ月間滞在。5月5日から始まる新町のギャラリー「アンヅシーン」(西区新町1)の個展「Hipo Tos Bostezo」では、滞在中に制作した新作を披露する。
日本滞在の皮切りとなる同展では、2008年と2010年に制作した作品計9点を展示。2008年制作のオアハカの市場を上空から捉えた銅版画とピクニックの様子を描いたドローイングは「アブストラクトなグラフィック」なのに対し、ウーパールーパーやワニをモチーフにした銅版画や幻想動物をモチーフにした木版画など2010年の作品は、マリンさんなりの解釈を加えた「動物や自然のもの」を表現した具象作品と、趣の異なる2つの作風が並ぶ。作品の売り上げの半分は東日本大震災の被災者への義援金に充てる。
「一生成熟しない生物」というウーパールーパーなど作品の中の動物は、人や人生など表現したいことの「比喩」として用いている。「友人や家族との日々の生活から作品は生まれる。版画には表現したいと思ったことを実現できる無限の可能性がある」とマリンさん。
開催時間は16時~24時。月曜定休。4月22日まで。