大阪・道頓堀近くの法善寺門前にある上方浮世絵館(大阪市中央区難波1、TEL 06-6211-0303)で12月2日より、企画展「広貞 中判に込められた世界」が開催されている。
同館は2001年に開館した私設美術館で、上方浮世絵を常設展示する唯一の美術館。井原西鶴や近松門左衛門を生み出した道頓堀はかつて、歌舞伎や浄瑠璃の芝居小屋が立ち並ぶ「江戸時代のブロードウェー」だった。道頓堀五座としても有名な中座や角座で行われた歌舞伎芝居の役者を描いた上方浮世絵は、歌麿や広重など江戸の浮世絵とは異なり、写実的でありながらもゆったりとした姿が特徴という。
今回の企画展では、江戸時代後半の上方浮世絵界を席巻した絵師・広貞の浮世絵を展示。1841年から始まった天保の改革で水野忠邦が発令した「贅沢禁止令」により役者絵が禁止され、水野忠邦が罷免されるまでの約5年間は上方浮世絵が製作されていなかった。その後、上方浮世絵は1847年ごろから復活を果たしたが、当時、大量の役者絵を制作したのが広貞だった。
学芸員の藤川純子さんは「復活期の上方浮世絵は以前の大判から中判に変わり、多少小さくなった。また役者の名前が書かれていないなど、贅沢禁止令を意識して多少遠慮して書かれていたようだ」と話す。「広貞の浮世絵は中判と小さいが、背景を濃密に描いており、小ささを感じさせない」とも。
入館料は、大人=500円、小中学生=300円。開館時間は11時~18時(入館は17時30分まで)。月曜(休日の場合は翌日)と今月29日~31日は休館。同展は来年3月1日まで。