旧暦の正月である「春節」に中国や台湾などの中華圏からの観光客が増えるのに合わせ、2月2日~6日、大阪ミナミの百貨店や商店街など13施設、約2,000店が協力し、「春節メガセールin大阪」を行った。
このセールは、大阪市、大阪商工会議所、関西国際空港が中心となり、ミナミの各施設に呼びかけて実施したもので、関西国際空港に降り立った観光客にパンフレットを配布するなどしたほか、各店舗では割引やプレゼントなどの特典を提供した。
戎橋筋商店街では期間中、中国、台湾、韓国からの観光客に向け、各言語での道案内やパンフレットの配布などを行う臨時の案内所を設置し、大型電気店や飲食店、ホテルなどへの行き方を各言語で案内した。同商店街は難波駅と戎橋を結ぶ約100店舗から成る商店街で、海外からの観光客も多く、売り上げの半分が外国人観光客で占められる店もあるという。
ミナミでは大阪市と南海電鉄が共同で2009年4月、南海難波駅の1階に「総合インフォメーションセンターなんば」を開設し、テレビ電話通訳システムで英語、中国語、韓国語での案内を行っているが、ミナミの商店街が外国語での観光案内をすることはこれまでなかった。
道頓堀のたこ焼き店「元祖たこ昌」(大阪市中央区道頓堀1)では、来店客の約1割を中国などの外国人観光客が占める。営業部の小林洋さんは「中国からのお客様はツアーの団体で来られることが多く、40~50代の来店が多いようだ」と話す。
同社は2010年3月、香港の雑誌「Uマガジン」に取り上げられたほか、今年1月にはやはり香港の「Now TV」の取材を受け、4月に放映される予定。大阪の食文化の象徴として紹介されるという。
観光客が多く通る心斎橋筋商店街に位置する大丸心斎橋店(大阪市中央区心斎橋筋1)は、意外にも売り上げに占める外国人観光客の割合は1%と少ない。しかしながら日本人客の売り上げが伸び悩む中、数少ない成長セクターとして、外国人観光客の取り込みを図っている。
同店を訪れる外国人観光客の半分以上は中国人で、資生堂などの化粧品、アジアで人気の高いバーバリーブルーレーベルをはじめ、アニエスベー、サマンサタバサなど日本で製造するブランド品の人気が高い。
同店営業推進部販売促進担当の田村晃之さんは「中国人観光客は、ブランドの情報を相当下調べして来ていて、少し前の日本人の海外旅行に似ている。韓国、台湾などアジア全体からの観光客が増えているが、中国人観光客はお土産をたくさん購入するなど富裕層が多い印象」と話す。
同店周辺は長堀通りなどバスを停車しやすい場所があることもあり、外国人観光客が団体で訪れるルートに組み込まれている。このため外国人観光客の売上は関西の大丸でも最も多い。同店の中では本館への来館が多く、北館の「うふふガールズ」などの情報は外国人観光客にはあまり届いていないという。
同店では心斎橋筋商店街と共同で、中国などアジアからの観光客を歓迎する施策を取っており、「地域としてそういう取り組みをしているということを旅行代理店にアピールすることは重要」(田村さん)という。
大阪の観光振興・コンベンション誘致を図るためにさまざまな事業を展開している大阪観光コンベンション協会(大阪市中央区南船場4)は2010年7月、これまで日本国内にあった中国語ホームページを収容するサーバーを中国国内に移転したところ、アクセスが急増した。
中国から日本国内のサーバーにアクセスした場合、通信環境の関係から、中国国内へのアクセスに比べて8~10倍もの時間がかかっていたが、サーバーの中国移転によりアクセス速度が改善し、前年度比1,800%のアクセス数を記録しているという。
同協会では中国国内の検索エンジン「百度(Baidu)」などにネット広告を出稿しホームページへの集客を図るほか、2010年12月には、中国での日本情報ポータルサイト「JAPAN在線」に大阪ショッピング特集ページを掲載するなど、中国向けプロモーションも展開している。
同協会では2010年9月、台湾向けにFacebookページ「就愛玩大阪」(だから大阪で遊ぶのが好き)も立ち上げた。現地の業者に委託して台湾向けにタイムリーな大阪観光情報を発信しており、立ち上げ後わずか1カ月で7,000人のファンを獲得、現時点までにファン数は9,300人を超えている。
同協会情報発信担当部長の狭間惠三子さんは「台湾からの観光客は個人旅行が中心で、インターネットでの情報収集が一般化している。日本人が書いたブログを見たり、『ことりっぷ』など日本人向けの観光ガイドブックを見たりして観光する人もいる」と話す。より個々のニーズに応じた情報発信、口コミの醸成を図るために、Facebookを有効に活用している事例といえる。
中華圏とひとくくりにしてしまいがちだが、中国人観光客と台湾人観光客の旅行スタイルや買い物スタイルは異なっている。
狭間さんは「中国人観光客の7割が団体旅行で、ルートの途中変更ができない、親せきや友人の家に泊ることができないなど、まだまだ制限が多い」という。「ゴールデンルート」と呼ばれる大阪・京都・富士山・東京などを5泊程度で一気に巡る団体バスツアーが多く、同協会としてのプロモーションも中国に出向き、現地の旅行代理店や旅遊局を集めて行う説明会などが主なものとなる。
買い物については、「中国人観光客はキャラクターものが好き。上海万博でも日本人係員が身に付けていた大阪城のピンバッジがどうしても欲しいという中国人が多かった。一方で台湾人観光客にはもう少しひねったものが受ける」(狭間さん)という。
大阪アドバタイジングエージェンシーズ協会が昨年10月、道頓堀で50人の中国人観光客を対象に行ったアンケートによると、88%が団体旅行で、個人旅行は4%に過ぎなかった。また日本への旅行回数は「1回(初めて来た)」が82%と大半を占めていた。
大阪に関する情報の入手先としては、「旅行会社の宣伝・紹介」が42%と最も多く、次いで「家族や知人に聞いた」が34%、「TVで見た」が12%、「新聞や雑誌の記事を読んだ」が8%、「インターネット」はわずか6%だった。
とはいえ中国人観光客もやがては個人旅行が主流になり、韓国人や台湾人などと同様にインターネットで積極的に情報収集するようになる。狭間さんは「現在中国からの訪日客で最も多いのは20~30代の女性で、全体の3割を占める。情報に敏感な女性たちは、早晩お決まりの旅行パターンに飽きてくると思われる。中国からの観光客もリピーター化が進むと、滞在型商品へ移行することは必須」と話す。