大阪・ミナミで営業を続ける唯一の茶屋「たに川」(大阪市中央区島之内2、TEL 06-6211-2219)が1月20日、2年ぶりに芸妓(げいこ)のお披露目を行った。
昨年から芸妓見習いをしていた美与鶴(みよづる)さんがお披露目を行い、同店の芸妓は5人になった。美与鶴さんは京都府出身で母も元芸妓。幼い頃から親しみのあった芸妓に憧れ京都で舞妓をしていた。一度花街を離れ定時制高校を卒業後、同店で稽古を再開。見習い期間10カ月を経て芸妓になった。お披露目を終え、「コロナ禍でも長年の夢をかなえさせてもらい感謝の気持ちが大きい。恩返しができる芸妓になりたい」と意気込む。
主人の谷川恵さんは「コロナ以降、会社での利用やインバウンドが減り大変厳しい状況。仕事が減ってしまいアルバイトをしている芸妓もいる。商売として成り立たせられるようにしていきたい。美与鶴はしゃべりが達者で頼もしい。ミナミの人に愛される芸妓になってほしい」と話す。
大阪にはかつて「花街」と呼ばれる歓楽街があり、1935(昭和10)年ごろの芸妓在籍者数は北新地500人、新町900人、堀江500人、南地(今のミナミの中心部)2000人で、南地は日本最大の花街としてにぎわった。大阪万博の頃をピークに減少し現在は北新地に6人、南地に5人となった。同店は1969(昭和44)年に開業。南地で営業を続ける唯一の茶屋として現在も営業を続けている。
茶屋は芸妓を呼んで客に飲食をさせる店で、料亭と違い厨房(ちゅうぼう)がない。同店では客の好みに応じてお好み焼き、ラーメン、カレーなど幅広く取り寄せる。利用に決まりはなく、同窓会、マージャン、稽古場など要望に応じてアレンジする。芸妓は舞踊を担当する立方(たちかた)と三味線や鳴り物を担当する地方(じかた)に分かれる。