大阪・ミナミで営業を続ける唯一の茶屋「たに川」(大阪市中央区島之内2、TEL 06-6211-2219)で働く「千鶴(ちづる)」さんが芸妓(げいこ)としてデビューして約1か月がたった。
祖母が華道を教えていたことから着物や芸事に触れる機会も多く、高校も芸術文化科を選んだ千鶴さん。芸妓の世界を知ったのは高校2年生のときで、祖母に見せてもらった新聞記事がきっかけという。「大阪に茶屋があることは漠然と知っていたが、そのとき初めて『たに川』という店だと分かった」と振り返る。
高校卒業を控えた昨年1月、高校で出会い仲良くなった先輩に進路についてアドバイスをもらおうとしたところ、たに川で働いていることがわかった。先輩は、今年2月に芸妓としてデビューしたまり鶴さん。千鶴さんは「まさか先輩がそこで働いているとは夢にも思わなかった」と驚いたという。1月にはたに川に仮入門し、「お座敷」の補助に入ることになった。高校卒業後も会社員として働きながら、夜はたに川で働いていたが体調を崩し2カ月余り入院。入院中に会社を辞めてたに川で働くことを決め、退院後芸妓見習いとして再スタートした。
「高校で三味線や日本舞踊を習っていたが、基礎中の基礎だったことが分かった」と千鶴さん。11月28日に芸妓デビューしてから約1カ月たち「化粧や、着付け、裾引(すそひき、丈の長い着物)を身に着けての所作などに少しはなじんできた」と振り返る。「中身が伴わないと『ひいき』(客のお気に入り)にはなれない。会話の引き出しを増やして、『しゃべるほど面白い』と思ってもらえる芸妓になりたい」とも。
同店を経営する谷川恵さんは「若い芸妓が増え、客層が若返っている。ホテルや旅行会社を通じて訪日客からの依頼も増えているので、茶屋の文化を知ってもらえる機会ができてありがたい」と話す。千鶴さんが芸妓になったことで、同店の芸妓は5人になった。