ギャラリー・アビィ(大阪市中央区南船場2、TEL 06-6261-7383)で7月14日、廃れた景色や廃墟にスポットを当てた写真展「廃景●6」が始まった。
10年ほど前の「廃墟ブーム」をきっかけに始まった同展は、一般公募のグループ展で、同ギャラリーの人気シリーズのうちのひとつ。6回目となる今回は、小林哲朗さんや大畑沙織さんら10人が撮影した「廃景」を展示する。作品では、それぞれが注目する分野の「廃景」や、遊具が取り残された遊園地の様子、近年まで使われていた足尾銅山の廃線跡、刑務所の独房跡などが表現される。
ギャラリー代表の吹雪大樹さんは「廃墟はグレーっぽいイメージを持つ方が多いが、実はとてもきれいなもの」と話す。「建物の中に足を踏み入れないと見ることができない景色やそこにしかない景色を求める面白さがある。建物が崩壊することで起きるあり得ない光景を見ることができるのも面白い」とも。ギャラリー内にはA1サイズなど大きいサイズの写真を多く展示、細部まで見ることができるように工夫した。
今回、多くの作家が取り上げたのが今年4月に上陸が解禁された長崎市沖の無人島「軍艦島」(端島)。石炭で栄えた、南北500メートル、東西150メートルほどの小さな島に、最盛期には5,000人以上が居住。大正時代に形成された街は、当時では非常に珍しい鉄筋コンクリート造10階建ての集合住宅などが立ち並んでいた。
伸之助さんは、1970年代に閉鎖されて以降、人の手が全く入っていない街を19年前に撮影した作品を展示、他の作家が近年同じアングルで撮影した写真もあり、それらを見比べることもできる。「建物が朽ちていく様子が一目で分かる。木製の手すりが崩壊していたり、鉄筋がむき出しになっていたりと人の手が入らなくなった瞬間、建物は朽ち始める」と吹雪さん。
廃景を撮る人には、建物がその場にあったという記録を残そうとする人や建物をみとる気持ちの人などさまざまな思いが交錯する。吹雪さんは「建物が使われなくなった当時の暮らしが残ったままになっており、こうした光景が現在も存在していることを知ってもらうだけでもありがたい」と話す。
開催時間は12時~19時。入場無料。今月19日まで。