特集

行動につながるプロモーションとして期待が高まる
広域なんば圏のOOH広告・最新事情

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■OOH広告の元祖!?道頓堀の屋外広告

くいだおれ太郎 大阪・ミナミの道頓堀は、観光名所としても知名度の高い「グリコ看板」をはじめ、かに道楽の「動くカニ」、づぼらやの「フグ」、中座くいだおれビルの「くいだおれ太郎」など、全国的にもよく知られたOOH広告の聖地ともいえる。

 2008年7月に閉店した老舗料理店「大阪名物くいだおれ」(道頓堀1)の看板キャラクターとして知られる「くいだおれ太郎」。文楽人形を意識し、チンドン屋の衣装で客を呼び込もうと、創業者の発案で店頭に立つことになったが、観光名所として有名にはなった一方で、料理店に入る客は少なかったという。同店の閉店に伴い、一時は「太郎」の売却話も出たが、現在は隣接する中座くいだおれビルに「再就職」し、観光客を楽しませている。

くいだおれ太郎、道頓堀に復帰-早くも記念撮影の人気スポットに

カール 2008年3月に登場した、明治製菓「カール」発売40周年を記念して設置された巨大看板。大きさは縦4メートル、横18メートルの横長の看板には、カールを食べる「カールおじさん」が立体で描かれ、毎時00分には「カールおじさん」の帽子が上がり、中からキャラクターの「ケロ太くん」が姿を見せるパフォーマンスも。同年10月には、くしカツ店「だるま 道頓堀店」の壁面にも巨大看板がお目見えした。

大阪・道頓堀に「カール」巨大看板-3時の時報は和田アキ子さん道頓堀の「だるまビジョン」に個人CM-俳優志望者や医師などが自己PR
ルパン三世 道頓堀は、大阪を象徴するエリアということで観光客も多く、話題性のあるプロモーションが実施されることも多い。アニメ「ルパン三世」の世界観を活用した「LUPIN STEAL JAPAN PROJECT」プロモーションでは、昨年12月のある朝に突然、「くいだおれ太郎」がルパン三世によって盗まれたという想定で、近隣の屋外ビジョンで「犯行予告」が上映され、話題となった。

道頓堀の「くいだおれ太郎」盗まれる-ルパン三世が犯行声明
 道頓堀はかつて芝居の街であったこともあり、人を楽しませる分かりやすい看板や、ド派手な屋外ビジョンなどが街を彩っている。観光客らは思い思いに看板を見て、写真に収めるなど楽しんでいるようだ。一方で、街全体的に看板が多いため、単体では目立つことが難しくなってきているのも事実。ルパンの事例のように、複合的・立体的なプロモーションを組み立てる企画力が重要だ。道頓堀


■スタジオからの生放送や、顔認識機能を搭載する屋外ビジョン

トンボリステーション 観光客が行き交う観光名所・戎橋を両側から挟む形で設置されている屋外ビジョンが、「トンボリステーション」と「トンボリ・リバーサイドビジョン」だ。「トンボリステーション」は戎橋の南西にあるベルスードビル(道頓堀1)の北側壁面に取り付けられた200インチのビジョンで、「トンボリ・リバーサイドビジョン」は戎橋の北東にあるオグラビル(宗右衛門町)の屋上に設置された、同じく200インチのビジョン。

 これらのビジョンはいずれもプラネット(北堀江1)が運営しており、北堀江にある自社スタジオと光回線で結び、スタジオで撮影している番組を生放送することができるほか、両ビジョンを連動させ、同じ映像を同時刻に放送する「シンクロ放送」も可能となっている。

プラネット
トンボリ・リバーサイドビジョン 戎橋の通行人数は、1日あたり平日=21万人、休日=29万人だが、「戎橋横にH&Mがオープンしたので人の流れが増えている」と同社クリエーティブグループの織田雄一さんは話す。「心斎橋から難波というホットラインを結ぶ動線上にあることや、グリコ看板やかに道楽、くいだおれなどが近くにあり観光客も多い」と話す。

 夕方の3時間は、自社スタジオから自社制作番組「ラジカルビデオジョッキー」を生放送し、映画情報・音楽情報などのエンタメ情報を発信している。織田さんは「ビジョンにスピーカーとカメラが付いているので、ビジョン前にいる人たちの様子を見ながら呼びかけることもできる」と話す。日替わりで女優や歌手、アイドルなどが出演しファンも多いという。

ラジカルビデオジョッキー
caos 「トンボリステーション」には、同社が開発したパターン認識システム「caos(顔ッス)」を搭載しており、カメラで撮影した通行人の顔部分に画像を重ねてリアルタイムに表示するというプロモーションも行われている。「『caos』を使ったプロモーションは、キャラクターに変身できるなど通行人が参加できることから注目度は高い」と織田さん。

通行人が森永チョコボール「キョロちゃん」に変身-道頓堀のビジョン企画で
犯行声明 同ビジョンの特長について織田さんは「街中の人が集まる場所に設置しているため、ショッピング客も多く購買に結び付きやすい。4マス媒体の効果が落ち込む中、プッシュ型の媒体として注目されている」と話す。昨年12月に「ルパン三世」が「くいだおれ太郎」を盗んだ際には、両ビジョンでルパンからの「犯行声明」が流された。

 また昨年12月に、オープン前のラズ心斎橋ビルの壁面を利用した、NTTドコモ関西の「3D動画広告」が実施された際には、「トンボリステーション」のスピーカーが連動して音声を送出した。「他の媒体と連動することで広がりが出る」と織田さん。

ラズ心斎橋に日本初の大型3D動画広告-ドコモが期間限定で

■ゲリラライブで注目される、アメリカ村の「RIBIA」

 若者の街・アメリカ村の三角公園に隣接するビルに取り付けられた屋外ビジョン「RIBIA」。実はこのビジョンには特殊な仕掛けが施されている。普段は音楽コンテンツを中心にさまざまな情報を上映するビジョンとして稼働しているが、週末などに突如、ビジョンがせり上がり音楽ステージが登場、アーティストがゲリラライブを行うことができるのだ。

RIBIA
RIBIA 同ビジョンが位置するのは、若者が常に集まり、流行の発信地として知られるアメリカ村・三角公園のすぐ西側。音楽、ファッション、クラブなどのストリートカルチャーを発信する街のシンボルとして、209インチのビジョンを通じ、アーティスト情報、街情報、視聴者出演番組などを10時~22時まで上映している。

RIBIAライブ 同公園は休憩場所としても利用されることから、「1人あたりのビジョン視聴時間は平均15分を超える粘着性の高いビション。隣接する人気たこ焼き店『甲賀流』のたこ焼きを食べながらビジョンを楽しむ人も多い」(同ビジョンを運営する大阪屋通商の栗岡一郎さん)。

 同ビジョンは日本で唯一の可動式ビジョンで、19秒でビジョンそのものがせり上がり、音楽ステージが登場する。ビジョンでアーティストのプロモーションビデオを流した直後に、ステージに本人が登場して歌うなど、居合わせた若者らへの訴求力は高い。これまで、愛内里菜さん、西野カナさん、スガシカオさん、GIRL NEXT DOORなどのメジャーアーティストのゲリラライブのほか、「キッズダンスコンテスト」などの自社イベントにも用いられている。

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アメリカ村三角公園でキッズダンスコンテスト-年間チャンピオン決定へ
ハーゲンダッツ 音楽ライブ以外にも、ステージを利用した、サンプリングイベントも実施された。今年5月に行われたハーゲンダッツの「クリスピーサンド」のリニューアル記念イベントでは、同商品を手にした女性3人組の写真を撮影する「ベストクリスピース・コンテスト」を実施。ターゲット層が多く来街するアメリカ村の三角公園横という好立地で撮影会を行った。

ハーゲンダッツ新「クリスピーサンド」-アメリカ村で発売イベント
 栗岡さんは「ビジョンだけでなくステージも活用して、アメリカ村のストリートカルチャーを発信し、活性化につなげていきたい」と話す。「近隣の映画館で行われた記者会見を中継するなど、これまでも面白い取り組みをしてきた。今後はインターネットを活用した生中継などにも取り組んでいきたい」とも。


■動線を活かしたフラッグ広告

戎橋フラッグ ミナミで最も人通りの多い心斎橋筋商店街と、隣接する戎橋筋商店街には、アーケードにフラッグ広告を掲げることができる。今年3月6日に戎橋横に「H&M」がオープンする際には、心斎橋駅から同店までの心斎橋筋商店街と、なんば駅から同店までの戎橋筋商店街に開業を告げるフラッグ広告を掲出し、買い物客らにアピールした。

高島屋増床、H&M開業に合わせ、地元地下街・商店街も活性化狙う
御堂筋フラッグ 昨年3月20日に開業した「阪神なんば線」。開業前の盛り上がりを高めるために、御堂筋沿いと、南堀江の立花通り(オレンジストリート)にバナー広告が掲出された。いずれも一定距離ごとに同デザインのバナー掲出することから、統一感を保ちつつ人の目に入りやすい媒体だ。

御堂筋と南堀江に阪神なんば線PRバナー掲出-開業をアピール

■屋外広告に漫画のノックシーン

100ノック 今年8月、ミナミのビル壁面などに設置されている数カ所の屋外広告に、野球漫画の「ノックシーン」を描いた広告が登場した。これは、雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の30周年を記念する「バッチコイ! ガンバレ、高校球児! 100本ノック広告」キャンペーンとして企画・実施されたもの。

 各広告には、同誌で掲載中の野球漫画「ラストイニング」と「高校球児ザワさん」の「ノックシーン」を1コマずつ掲載しており、ミナミのほか、甲子園球場、梅田、三宮など阪神エリアの交通広告、屋外広告を中心に100種類を張り出している。

 携帯サイトとも連携し、全100枚の広告を携帯電話で撮影し、事務局に送ることで「ラストイニング」に実名で登場できる権利が得られるキャンペーンも実施、ネットの口コミでも話題になった。

屋外看板に野球漫画の「100本ノック広告」-雑誌キャンペーンでグリコ看板


広域なんば圏のOOH広告について、これまでの事例やインタビューを基に紹介した。屋外ビジョンについては、単にミュージックビデオなどを流すだけにとどまらず、リアルタイム性、双方向性を追求した番組制作や、音楽ライブやサンプリングなどの体験ができることがポイントだ。また、従来からあるフラッグ広告、バナー広告、屋外看板も、単体ではなく複数媒体を連携させることで面としてのプロモーションの広がりが出るほか、ウェブサイトや携帯サイトなどと連携させることも重要。なんば経済新聞では今後も、OOHを活用した新規性のあるプロモーションに注目していきたい。

大阪ミナミの屋外ビジョンの詳細はこちら
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