-大阪のギャラリーの特徴を、キタとミナミに分けて教えてください。
淀屋橋や西天満などを中心とするキタエリアには、昔から代々続く画廊が集中しています。定期的に展覧会を開催し、国内外のアートフェアに出展しているところが多く、「アート界で活動している」という印象があります。金融機関やオフィス街に囲まれた立地から、美術品を商取引する「美術商」として運営しているところが多いのも特徴です。
なんばや心斎橋などのミナミエリアに目を向けると、純粋に美術品を展示・販売することだけを目的とした画廊の数は圧倒的に少なくなり、音楽ライブやイベントの会場にもなる「アートスペース」として運営しているところが多くなります。ここ数年の間に開業したギャラリーや、他から移転してきたギャラリーの姿も目立ちますね。
-取り扱う作品にも違いはありますか?
キタは、現代美術として確立された「ハイ・アート」を主に取り扱うところが多く、ミナミは、音楽やファッションなど「ストリート」と結びついたアートを紹介するところが多い、という違いがあります。例えば、アメリカ村にある「FUKUGAN GALLERY(フクガン・ギャラリー)」(中央区西心斎橋筋1)は音楽シーンとつながった作家を取り扱っていたり、「コム・デ・ギャルソン」が南船場のアートスペース「Six」(中央区南船場3)を運営していたり…。
そうした音楽やファッションとのコラボレーションは、キタよりはるかにミナミに多い。その理由として、若者が集まるミナミでは、若い力がアートシーンを動かしているということが挙げられると思います。全員20代のメンバーが運営する南堀江の「Pulp(パルプ)」(西区南堀江1)など、若者の自由な発想で展開される活動は「ミナミっぽさ」の一つではないでしょうか。
南船場にオルタナティブスペース「Pulp」-アイデアを形にする場所
-ほかに「ミナミっぽさ」の特徴を挙げるとすれば?
ギャラリーが街中にあるので、何かのついでに寄れる、日常的に見に行けるのはミナミならでは。「ブラブラ歩き」がしやすいというのは、それだけ偶然何かに出会う機会も増えます。南堀江の立花通り(通称=オレンジストリート)に移転した「TEZUKAYAMA GALLERY(テヅカヤマ・ギャラリー)」(西区南堀江1)は、買い物途中に間違えて入ってしまうほどの場所にあり、それぐらいの距離感でアートに触れ合えるというのは魅力的だと思います。
立地的なことに加えて、ミナミのギャラリーには気負わずに入れる雰囲気があると思います。北浜から湊町に移転した「ギャラリーほそかわ」(浪速区元町1)など、実際中に入っても、気軽に質問に答えてくれるところが多いですね。そのほか、ポスターなどのグラフィック作品を展示する南堀江の「dddギャラリー」(西区南堀江1)は、誰でも楽しめるギャラリーとしておすすめです。
ミナミは音楽ライブやワークショップ、野外のライブペイントなど「ライブなアートシーン」が繰り広げられる場所。直前に詳細が決まることが多く、FLAGでも拾いきれないことがあります。そういう意味で、ミナミのアートシーンは常に変化していて、実際に行ってみないと分からないという面白さがあると思います。
ギャラリー「帝塚山画廊」、南堀江に移転-若手作家発掘に注目湊町のギャラリーで個展「暗がりと白い影」-余白に込めた思い 南堀江「dddギャラリー」、リニューアル移転後初の企画展
●「studio J」(西区新町3) 高橋涼子個展「IN/OUT」(11月13日~12月25日)
人毛を使った美しくも奇妙な感覚を宿す作品で知られる高橋涼子さんの個展。今回は、刺繍作品を中心にした展示でギャラリーを「寝室」にする。
●「Tezukayama Gallery」(西区南堀江1) 後藤靖香個展「羊羹オサライ」(11月26日~12月28日)
国立国際美術館「絵画の庭」展にも出展した後藤靖香さんによる新作展。大阪の5つのギャラリー(Tezukayama Gallery/YOD Gallery/fabre8710/フクダ画廊/展現舎)が共同で開催する企画展「OSAKA ART COMPLEX(大阪アートコンプレックス)」の一環として開催される。
●「Yoshiaki Inoue Gallery」(中央区心斎橋筋1) 藤部恭代個展「Arabesuque」(12月4日~25日)
藤部恭代さんの初個展。アラベスクシリーズ、女性の表情をベールで覆うことにより、ベールと顔が重なり、見え隠れすることでベールの美しさと不思議な魅力を感じさせる。
●「Fukugan Gallery」(中央区西心斎橋筋1) 11月いっぱいまで常設展(要予約)。水内義人個展「ハナクソの香り」(12月4日~18日)
「巨人ゆえにデカイ」などの音楽活動でも知られる水内義人さんの個展を開催。