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阪神なんば線開業で、神戸-難波-奈良間が1本に
気になる運行ダイヤと周辺地域へのインパクトは?

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■阪神なんば線の開業で、神戸-難波-奈良間が1本で結ばれる

阪神電車試運転阪神なんば線(西九条-近鉄難波間、3.8キロメートル)は、現在の阪神西大阪線(尼崎-西九条間、6.3キロメートル)を東に延伸し、近鉄難波駅で近鉄に接続する形で建設が進められている。新線区間には、九条、ドーム前、桜川の3駅が新設され、2009年春に開業する。開業と同時に阪神三宮-近鉄奈良間で相互直通運転を行うことが決まっており、兵庫、大阪、奈良の3府県を結ぶ65.2キロメートルの直通ラインが実現する。

トンネル工事阪神と近鉄は、戦後間もなく難波での乗り入れを目指し、阪神は西九条までを西大阪線として1964年に開業、近鉄も近鉄難波までを近鉄難波線として1970年に開業させた。西九条-近鉄難波間は1967年から用地買収に取りかかったが、地元商店街などの反対もあり頓挫していた。その後、1997年の大阪ドーム(現京セラドーム大阪)開業以降、そのアクセス路線としての需要が高まり、2003年から同区間の工事が進められることになった。既にトンネル区間の掘削は完了しており、現在は軌道敷設を中心とした工事が行われている。

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■JRも三ノ宮-奈良間を直通運転か?-速達性と運賃が鍵に

阪神三宮-近鉄奈良間の直通運転は、「速達性を重視し、70分台で結ぶ」(近鉄・野口副社長)ことを目指している。これに対抗してJRは今年3月、片町線の貨物支線だった城東貨物線をおおさか東線(放出-久宝寺間)として開業、朝夕ラッシュ時に尼崎-奈良間で直通快速を最速64分で運転している。

おおさか東線おおさか東線を経由する直通快速は、今後は三ノ宮までの延長を想定して運転されていると考えられる。おおさか東線内は全駅通過しているが、ダイヤ上は相当の余裕がある状態。スピードアップと三ノ宮までの延長運転を行うとして、現行の速達列車の標準的な所要時間を考慮すれば、三ノ宮-奈良間は80分程度になるとみられる。

近鉄電車阪神なんば線を経由した三宮-奈良間の運賃について、正式発表はまだ行われていないが、現行の運賃水準で試算すると850円程度(大人片道、普通運賃)となる。JRが現行1,210円(同)に対してかなり有利にはなるが、JRが特定区間運賃として値下げ対抗する可能性も残る。

■阪神・近鉄の相互直通運転は1日あたり190往復

阪神なんば線試運転ダイヤについても現時点では正式な発表は行われていないが、相互直通運転は、阪神三宮-近鉄奈良間を中心に上下各190本程度の列車が運転されるものと予想される。現在の近鉄側のダイヤでは快速急行と急行が平日1日あたり上下各96本運転されており、これに加えて準急(区間準急)、普通のうち上下各95本程度が相互直通運転の対象になるものと推測される。尼崎から先の阪神本線では梅田からの列車も走行するため、神戸-奈良間の相互直通運転は快速急行のみになる公算が高く、他の列車は尼崎での折り返し運転になるとみられる。

ドーム前駅新線内では全列車が各駅に停車、また現行の停車駅基準を加味すると、西九条-鶴橋間(8駅)では全列車が各駅に停車する形になる。1日の運転本数から推測すると、日中の時間帯には、5~7分間隔で1時間あたり8~12本の列車が運転されるものとみられる。

平日の日中は6両編成が基準となる模様で、朝夕ラッシュ時は、尼崎-近鉄奈良間で最大10両編成での運転が想定されている。この場合、尼崎で4両を切り離し、三宮-尼崎間は6両編成で運転する形に。ただし速達性を優先する場合、尼崎での増結・解放作業をなくし、全区間6両編成での運転も想定されている模様だ。

今回の相互直通運転計画には近鉄の有料特急は含まれていないが、同社の小林社長は、阪神が相互直通運転をしている山陽電鉄への乗り入れも視野に入れ、山陽姫路-近鉄奈良、および山陽姫路-伊勢志摩間での特急列車の運転を構想に入れている。

■現在の阪神間の移動は、速達性、乗車機会ともにJRが有利

阪神電車西九条行き現在、大阪・梅田-三宮(三ノ宮)間にはJR、阪急、阪神がほぼ並行して走っており、阪神間の鉄道による移動の際にはいずかを選ぶことになるが、スピード、乗車機会ともに現状ではJRに軍配が上がる。

JRは、阪神間のみならず兵庫県西部から敦賀(福井県)までの長い区間で、新快速や快速が直通運転を行っている。阪神間では、日中の時間帯には1時間あたり、新快速4本、快速4本、普通8本の計16本体制で運転を行っており、所要時間は最も早い新快速が20分(大阪-三ノ宮間)、快速で27分(同)。

一方の阪急は、1時間あたり特急6本、普通6本の計12本体制、梅田-三宮間の特急は27分で運転される。阪神は、1時間あたり特急(直通特急)6本、急行6本、普通6本の計18本体制だが、阪神間を結ぶ直通列車は特急(直通特急)のみで所要時間は29分(梅田-三宮間)。

JR神戸線JRは近年、駅間距離の長い区間での新駅開業に力を入れており、芦屋-摂津本山間の甲南山手駅(1996年10月開業)や西宮-芦屋間のさくら夙川駅(2007年3月開業)の各駅を開業させ、中間駅での旅客獲得を行っている。新快速や快速のスピードアップで生まれた余裕時分を停車駅増加に回しており、西宮快速停車や芦屋新快速停車など中間駅での利便性向上につなげている。阪急や阪神も、特急(直通特急)の停車駅増加でこの動きに対抗している。

■阪神なんば線の開業による、周辺地域に対するインパクト

阪神電車試運転阪神なんば線の開業により、神戸・三宮から大阪方面へは、これまでの梅田一極集中から難波も加えた形になる。神戸から大阪を見ると、現状では圧倒的に梅田志向が強い。これは、並走するJR、阪急、阪神の各路線がすべて梅田へとつながっていることに起因する。阪神なんば線の開業を期に、三宮から難波への利便性が大幅に向上するため、梅田志向から梅田・難波選択へと人々の動きに変化が生まれる可能性もある。

難波以南地域の在住者にとって、阪神なんば線の開業は大きな意味を持つことになる。難波ターミナルの利用者は、南海と近鉄の利用者が中心であり、南海は大阪南部地域から、近鉄は大阪東部はもとより、奈良県北中部地域、名張方面と広範囲から利用者を集めている。

阪神電車、ミナミへ。これらの地域の鉄道利用者にとって、難波から神戸への移動は、現状では梅田経由が大半で、所要時間は最短で35分程度。西九条から阪神西大阪線の利用も少なからず考えられるが、これは阪神間の中間駅への利用が中心だ。阪神なんば線の開業後は、乗り換えなしで行くことができるようになり、特に近鉄沿線から神戸へは相互直通運転を行う奈良線を中心に、阪神を利用して神戸へという流れが定着するものと考えられる。

また、天王寺方面から神戸方面へも現状では梅田経由が大半。梅田へは地下鉄が最短だが、途中難波を通ることから、阪神なんば線の開業後はいかに難波で降りて乗り換えてもらうかがポイントになってくる。

■広域難波圏の集客力アップのための取り組みが続々

相互直通運転を前に、近鉄は阪神の車両を借り受けて5月から近鉄線内での試運転を開始した。阪神も近鉄の車両を借り受けて今秋にも試運転を行う模様だ。阪神なんば線の開業に向けて、広域難波圏では集客力アップのための取り組みが続いている。特に、阪神なんば線の開業効果をダイレクトに得られると期待される難波ターミナル周辺では、さまざまな取り組みが行われている。

南海ビル南海電鉄は昨年7月、難波駅を中心とした周辺地域の再生計画を発表、同駅を「大阪・ミナミの玄関口」と位置づけリニューアルするとともに、「高島屋」や「なんばCITY」など周辺施設への移動をスムーズ化する工事を進めている。また隣接する商業施設「なんばパークス」の第2期工事が昨年4月に完成、さらに「なんばCITY」南館に飲食施設「なんばこめじるし」をオープンするなど、周辺施設を充実させている。

キャナルテラス堀江難波ターミナルの西側、湊町エリアでも開発が続く。湊町リバープレイス南側には現在、31階建ての新たなランドマーク「マルイト難波ビル」が建設中で、店舗、事務所、ホテルが入居を予定しており、2009年6月に竣工する。また湊町リバープレイス北側には7月15日、飲食店が入居する商業施設「キャナルテラス堀江」が開業した。同施設前で大阪市が年内の供用開始を目指して整備を進めている人道橋が完成すると、難波ターミナルから湊町を経由して南堀江へと続く新たな導線が確保されることになる。

難波ターミナル周辺では、このように施設充実が続いているが、都市間競争という視点でふかんしてみると、必ずしも安泰とは言い切れない。梅田ターミナル、天王寺ターミナルともに百貨店の新規開店や建て替え、増床が2014年にかけて進んでおり、ターミナル間での競争がますます激化している。阪神なんば線開業は、大阪中心部にどのようなインパクトを与えるのだろうか。

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