特集

阪神なんば線開業を控え、生まれ変わる難波駅周辺 
激化する都市間競争へ広域なんば圏の次の一手は?

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■阪神なんば線の開業により神戸方面からのダイレクトアクセスが実現

阪神なんば線「ドーム前」駅 阪神電鉄は昨年8月、2009年春の開業を目指して整備を進めている新路線の名称を「阪神なんば線」に決定したと発表した。同線は、阪神西九条駅と近鉄難波駅を結ぶ3.4キロメートルの路線で、阪神電鉄などが出資する西大阪高速鉄道が建設を進めているもの。「九条」「ドーム前」「桜川」の3 駅が新設されるほか、阪神三宮駅と近鉄奈良駅間(約65.2キロ)での直通運転が予定されており、神戸・奈良間での移動の利便性向上が期待される。

広域なんば圏においても、神戸方面からの集客が期待される。三宮から難波への移動は、大阪駅(梅田駅)で地下鉄に乗り換える必要があるため、神戸方面からの集客は広域梅田圏に吸引されてきたが、同線の開業により阪神三宮駅から近鉄難波駅への直通ラインができるため、神戸方面からの買い物客などの増加が期待される。

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■南海難波駅周辺のリニューアル工事は2009年8月に完成

高島屋「新本館」 「南海ターミナルビル」を擁する南海電鉄は昨年7月、難波駅を中心とした周辺地域の再生計画を発表した。関西空港駅と難波駅を結ぶ直通列車を運行する同社は、難波駅を「大阪・ミナミの玄関口」と位置づけ、同駅をリニューアルするとともに、「高島屋」や「なんばCITY」など周辺施設への移動をスムーズ化する工事を進めており、2009年8月の完成を目指している。これに伴い、待ち合わせスポットとして有名だったロケット広場の「ロケット」を、昨年8月に撤去している。

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なんばパークス同社は、難波駅に隣接する商業施設の充実にも努めている。昨年4月、同社子会社の南海都市創造と高島屋が共同で開発する「なんばパークス」の第2期工事が完成し、全館がグランドオープンした。30代をメーンターゲットにした「時間消費型」の施設は好評を博し、グランドオープン後の1カ月間の来場者数は334万人を記録した。

なんばこめじるしまた昨年6月には、南海都市創造が「なんばCITY」南館に飲食施設「なんばこめじるし」をオープン。難波駅の南端に位置するため、なんばパークスに隣接していながら「エアポケット」になっていた場所をテコ入れし、新たな人の流れの創出を図った。

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■新施設効果は限定的。BIGSTEP売却でどうなるアメリカ村

ナンバヒップス 昨年後半の広域なんば圏では、大型商業施設や有名ブランドの出店が相次いだ。中でも昨年12月に開業した複合レジャー施設「ナンバヒップス」は、なんば経済新聞2007年下半期PVランキング1位に輝くなど、ネット上でも話題を集めた。また昨年11月には心斎橋ソニータワー跡地に複合商業施設「ラ・ポルト心斎橋」がオープン 。地下鉄心斎橋駅から地下道で直結し、心斎橋筋にも面している良好な立地だが、開業時のプロモーションは比較的静かなもので、下半期PVランキングでも9位にとどまった。これら新規開業施設の効果は今のところ限定的で、広域なんば圏外からの集客効果は未知数である。

開業迫る「ナンバヒップス」が館内を公開-話題の「ヤバフォ」初稼働心斎橋に新ランドマーク「ラ・ポルト」-ザラなど出店
キリンプラザ一方で、道頓堀の戎橋に隣接する「キリンプラザ」が昨年10月末に閉館した。1987年に建設され現代美術などを展覧するギャラリーにカフェなどを併設する同施設の建物は解体され、土地は売却される予定だ。

道頓堀「キリンプラザ」、10月末で閉館へ-歴史を振り返る展示会
ビッグステップまた大阪市の土地信託事業として建設されたアメリカ村の複合商業施設「ビッグステップ」は、事業の見直しにより不動産投資会社「パシフィックマネジメント」に売却され、施設運営を阪神電鉄子会社の「大阪ダイヤモンド地下街」が行うことになった。梅田地区で「ハービスENT」など大型商業施設を運営する阪神電鉄は、阪神なんば線の開業が来年春に迫っていることから、新たに沿線となる広域なんば圏への進出を目指していた。

アメリカ村アメリカ村には1980年代に衣料や雑貨などの店舗が集積するようになり、流行の発信地として多くの若者を集めているが、近年は建物への落書きや客層の低年齢化などから、20歳代以上の比較的購買力のある若者が堀江など周辺地域に流れるようになり、街としての発信力は一時期に比べ低下傾向にある。2006年には街の治安回復を目指し監視カメラが設置され、また三角公園ではファッションショーやアート系のイベントが開催されるなど再生の機運が高まるなか、ビッグステップの売却は1つの転換点となるだろう。

アメリカ村「三角公園」でファッションショー-店舗スタッフもモデルにアメ村で「今日だけはぼくの公園」企画-アーティスト名が公園名に

■心斎橋を中心としたファッションの街は西へと拡大

ディオール 心斎橋の御堂筋周辺は、シャネル、ディオール、カルティエなどの路面店が軒を連ねる日本有数のブランド街。中でも 御堂筋と長堀通りが交差する新橋交差点付近にはルイ・ヴィトンとシャネルが向かい合って出店するなど、有名ブランドの直営店が集結している。 昨年は4月に「エルメス」「ハリー・ウィンストン」が直営店をオープン、9月には「カルティエ心斎橋ブティック」がリニューアルしたのをはじめ、ドルチェ&ガッバーナが国内最大となる「御堂筋店」をオープンするなど、その数は40ブランド以上となった。また「プーマ」「バートン」といったスポーツ系ブランドの進出も相次いだ。

「カルティエ心斎橋ブティック」が改装オープン-売り場面積拡大西心斎橋の新ビルに「プーマ」直営店-100足限定シューズも心斎橋に米ボードスポーツ「バートン」直営店-国内2店舗目
エルメネジルド ゼニア心斎橋ブランド街の特徴は、新橋交差点を起点に西方へと広がっていることだ。この広がりは隣接する南船場や堀江へと続いており、面的に広大なファッション街を形成している。南船場では「イッセイミヤケ」の旗艦店が昨年4月に、南堀江でも「ポール・スミス」「ザ・ノース・フェイス」の直営店が昨年9月にオープンした。また新橋交差点の東方にあった「エルメネジルド ゼニア 大阪店」は昨年12月に西心斎橋に移転・リニューアルした。

御堂筋良好な景観は、ブランドにとってもそのイメージを戦略的に高めるのに役立つ。梅田と難波を結ぶ御堂筋は両側に並木と遊歩道が整備され、消費者のブランドイメージを高める景観が確保され、また各ブランドの旗艦店の出店により街全体のイメージが高まる。周辺の南船場や堀江にもカジュアルブランドやカフェ、雑貨などの店舗集積が見られるようになり、一体としての集客力が高まっていると考えられる。

イッセイミヤケ、心斎橋に全ブランドを扱う総合店-国内初南堀江に関西初「ポール・スミス ジーンズ」のオンリーショップ南堀江に「ザ・ノース・フェイス」新店-ライブラリーなどを併設伊メンズスーツブランド「エルメネジルド ゼニア」、西心斎橋に移転

■生活圏を背景に「日常使い」のできる店が集まる堀江エリア

堀江 都心部における地価の下落や、利便性を求めた都心居住の動きが大阪市内中心部でも顕著になっている。 中でも堀江エリアは、比較的静かな住環境と個性的な店舗の集積により、生活感がありながらも高感度なイメージが定着している。

堀江のカフェ堀江は江戸時代から1970年代までは「家具の街」として繁栄したが、大型家具店の登場などにより1990年代には寂れてしまった。しかし近年になり、家具店を改装したカフェの登場やフリーマーケットの開催、個性的な雑貨店の出店とともに、アメリカ村から流れてきた若者が集まるようになった。また2000年ごろからは東京発のセレクトショップの出店も相次ぎ、流行の発信地としてのイメージを築き上げている。

エイトビードルチェこうした背景により住居や新旧の店舗群、デザイナーなどが集まる堀江エリアには、日常使いのできる店が集まっている。連日「堂島ロール」を求める列ができる「モン シュシュ」が2号店を南堀江に出店したのをはじめ、北堀江で飲食店を展開するエイトジーコーポレーションが新規オープンしたカフェが話題になるなど、生活に密着した良質な店舗の集積が進む。

大阪・堂島で人気の「モン シュシュ」が南堀江に2号店北堀江にカフェ新店-生ロールケーキと「堀江バウム」が人気に
南船場の仕掛け人といわれるバルニバービ。同社が南船場に出店した大型カフェレストラン「ガーブ」は、問屋街を遊び場に変えたともいわれる。南船場を中心に大阪での店舗展開を進めてきた同社は今年4月、飲食施設「ウルトラ イート マーケット(仮称)」を北堀江に開業する。同施設は複数ジャンルの飲食店から構成される「飲食コミュニティー」として、飲食店の開業希望者を支援するとともに、独自性の高い業態の発掘にも期待がかかる。

北堀江に新飲食施設-関門海とバルニバービがコラボプロジェクト

■競争が激化する大阪都心部。難波駅再開発がその口火を切る

高島屋TE館 大阪市内では、梅田地区で2011年に三越大阪店の開業、大丸梅田店の増床、阪急百貨店うめだ本店の建て替えが予定されているほか、阿倍野地区でも2014年春の開業を目指し近鉄百貨店阿倍野本店が増床を計画しているなど、百貨店間での競争が激化している。特に、売り場面積が2005年度比で1.5倍になる2011年は「大阪2011年問題」といわれ、商業施設の供給過剰が懸念されている。

2009年の阪神なんば線の開通と高島屋の増床により、難波駅周辺の商業施設の集客力は高まるだろう。しかし就業人口の減少により鉄道の輸送人員が減少トレンドに入っていることや、2011年の百貨店売り場面積の大幅増加による過当競争を背景に、商圏の拡大効果の不発、売り場効率の悪化も予想される。広域なんば圏は心斎橋・道頓堀・アメリカ村・ 堀江など面的に広がる広大で多彩な街を形成しており、それぞれの街の特徴を生かした店舗集積や難波駅を起点とした回遊性の向上が、広域なんば圏全体の魅力を高める鍵になるだろう。

道頓堀
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