大阪を代表する繁華街である、心斎橋エリア。メーンストリート、御堂筋に面した場所には大丸やそごうといった老舗百貨店をはじめ、カルティエ、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドの路面店が立ち並び、一大ショッピングエリアを形成している。御堂筋の東側には繁華街が広がっており、さまざまな専門店や飲食店が集積している。
広域なんば圏の中でも、飲食店の絶対数が圧倒的に多い心斎橋エリアには、地方発の飲食店もまた多く出店している。淡路島をテーマにした「磯焼ダイニング 淡路島と喰らえ」は、東心斎橋の南小学校の向かいに3月14日オープンした。
同店はオープンに先駆け、淡路島活性化推進委員会を設立。地元の漁師や農家らの全面的なバックアップにより、淡路島の新鮮な食材を直ルートで仕入れるネットワークを確立、ユニークな店名のとおり「淡路島を喰らう」ことができる。
また食材だけでなく店舗内装も「淡路島らしさ」にこだわった。店舗デザインはスーパーマニアック(北区)代表の今福彰俊さんが担当、活気あふれる荷揚げ場のライブ感と臨場感をイメージした20坪の店内には、淡路島の特産品である鬼瓦を散りばめた。
東心斎橋に「淡路島と喰らえ」-店舗・食材ともに淡路島づくしの飲食店
心斎橋筋商店街内に4月26日にオープンした「南の楽宴ダイニング はなはな」は、沖縄料理が気軽に楽しめる店として人気を集めている。店舗面積97坪、席数150席の店内にはステージも設け、連夜沖縄民踊などのライブを行っている。
南国の雰囲気が漂う店内には、沖縄の民家をイメージした瓦や「シーサー」のディスプレーも置かれており、さながら小さな「沖縄テーマパーク」だ。
心斎橋筋商店街に沖縄料理店「はなはな」-連夜沖縄民踊ライブも
地方出身店のなかでも一大勢力を形成しているのは、九州のご当地グルメ店。博多の郷土料理として知られている「水炊き」の専門店が昨年夏に相次いでオープンした。
昨年8月にオープンしたのは、「博多水炊き 蟻月」の関西初出店となる心斎橋店。東京で人気のもつ鍋店「蟻月」を運営する蟻月(福岡市)が運営する新業態の2号店として、東京・代官山店に次いでオープンしたもの。
またトリゼンフーズ(福岡市)も昨年9月、水炊き専門店「博多華味鳥 心斎橋店」を心斎橋のホテル日航大阪にオープンした。同店も関西初出店となる。
鹿児島県から直送する黒牛・黒豚を使用したしゃぶしゃぶ、ステーキを提供するのは、JA鹿児島県経済連が直営する「華蓮」。高級ブランドの路面店が立ち並ぶ御堂筋沿いの「ドルチェ&ガッバーナ」が1階に入るビルの地下1階に、昨年10月オープンした。
「鹿児島の農産物をもっと多くの人に知ってもらうきっかけになれば」との主旨で、JA鹿児島県経済連として初めて九州以外の地域に出店をしたもので、鹿児島店、博多店に次ぐ3店舗目となる。
心斎橋にJA鹿児島県経済連直営店「華蓮」-鹿児島黒牛など提供
博多の「とんこつラーメン」も、根強い人気を博している。昨年9月に道頓堀のとんぼりリバーウォーク沿いにオープンしたとんこつラーメン店「一蘭(いちらん)」は、インターネット上のクチコミでも長期間にわたり話題となった店舗。
カウンターの1席1席に、目の前に「のれん」と、隣席との間に「仕切り」を設け、半個室状態で「集中して」ラーメンを食べることができる「味集中カウンター」が特に話題に。今では、毎週末には行列ができる人気店となっている。
「味集中カウンター」の博多ラーメン「一蘭」が道頓堀に関西1号店
意外なご当地グルメとしては、5月25日に道頓堀にオープンした金沢カレー店「ゴーゴーカレー」がある。
ゴーゴーシステム(石川県金沢市)が運営する「ゴーゴーカレー道頓堀本店」は、2004年に1号店を東京・新宿にオープンして以来、金沢、東京、ニューヨークなどに直営店・FC店を展開しており、関西初出店となる21店舗目に大阪・道頓堀を選んだ。今後も関西での出店を進めていくという。
「なんばCITY」南館に昨年6月にオープンした新飲食施設「なんばこめじるし」も話題を集めた。同施設は南海都市創造(大阪市中央区難波5)が運営するもので、大阪府南部・南海沿線の人気店の味が一カ所で楽しめる。
ケイオスの澤田充代表が総合プロデュースを、オレンジ・アンド・パートナーズの小山薫堂代表がネーミングとプロモーションを担当したもので、「地元では知られていても、世間にはまだ名前の通っていない『店力(みせりょく)』のある店を発掘した」(澤田さん)という。
同ゾーンのコンセプトは「地元の人たちが日常的に使いこなし、愛される路面店が集まる街」。本店移転や2店舗目出店(支店初出店)を中心とした12店舗が集まる。
なんばCITY南館に「なんばこめじるし」-地元で人気の12店舗出店
なんばこめじるしのすぐ北側、なんばCITY南館の1階に4月26日、鳥取県・境港から直送される素材を生かした居酒屋「とっとり岩山海 なんば店」がオープンした。
徹底的に鳥取にこだわった同店には、鳥取県出身の漫画家・水木しげるさんの作品「ゲゲゲの鬼太郎」グッズを販売する「鬼太郎商店」が併設。また木製のテーブルやいすなどの家具は、鳥取県で廃校になった小学校から譲り受けた備品でそろえた。
オープニングセレモニーには鳥取県知事も参加するなど、官民が連携した「鳥取県のアンテナショップ」を目指している。
難波に鳥取の素材を生かした居酒屋-グッズ販売「鬼太郎商店」併設
7月1日にオープンしたばかりの北堀江の複合飲食施設「ちゃぶマイル」も、9店舗のうち4店舗が国内のご当地グルメ店。北海道イタリアンバール「ezoccino」、海鮮料理「玄海対馬 津々浦々」、宮崎料理「宮崎 てげてげ」、沖縄料理「沖縄 Kitchin バナナ」と、ここでも九州・沖縄のご当地グルメが多く出店する。
同施設は、ふぐ料理店「玄品ふぐ」を全国に展開する関門海(大阪市西区)と、カフェやレストランの運営・企画を行うバルニバービ(西区)のコラボレートにより誕生した。 独自性を持った飲食店を集積することで、堀江の潜在力を生かすことができるとともに、「古く空洞化したビルの活性化を図るビジネスモデル」(同店担当者)化を狙う。
広域なんば圏には、福岡、宮崎、鹿児島などの九州地方や沖縄地方のご当地グルメの新規出店が目立つ。特に福岡発の店舗は関西初出店の地として大阪・心斎橋周辺を選ぶことが多いようだ。
地方発の店舗は、素材を直送し、その地方の郷土料理を提供するにとどまらず、店舗の内装をその地方のイメージにしたり、地方の音楽をステージで演奏したりと、テーマパークさながらの演出を行っていることも人気を博している理由のひとつであろう。
また、「なんばこめじるし」「ちゃぶマイル」のように、ご当地グルメを集積させることで、飲食施設の目玉として活用するといった事例も見られる。これらの施設では気軽にさまざまな地方の料理を楽しめるのが特徴で、近隣の住民や仕事帰りの会社員などが普段使いできる店作りになっていることがポイントだ。
今後も広域なんば圏には数多くの飲食施設の出店が計画されている。特徴のない店は飽きられ閉店の憂き目に遭う、厳しい業界だ。根強い人気を集める「ご当地グルメ」店が、今後もさまざまな話題を提供してくれそうだ。