プレスリリース

紅く煙るクラシックコンサート 1万人の観客が熱狂 「石田組」大阪城ホール公演レポート到着

リリース発行企業:株式会社キョードーメディアス

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10月11日、石田組のコンサートが大阪城ホールにて開催された。コンサートホール以外の大規模な会場に登場するのは、2024年の日本武道館公演から2年ぶりとなる。



石田泰尚の口から大阪城ホール公演がアナウンスされたのは昨年の夏、石田組の大阪フェスティバルホール公演の終演直前のことだった。2026年の石田組全国ツアーのハイライトとして選ばれた会場の名前が告げられると、期待と驚嘆が入り混じった歓声が上がった。日本武道館での公演を見事完売させたとはいえ、1万席を越える会場での室内楽のコンサートは前代未聞。一年以上先を見据えた目標に向かい、石田組は全国各地での演奏を通じてポテンシャルを高めてきた。

会場に入り、ステージ正面の席に座ると改めてこのホールの大きさに気付かされる。1983年にオープンした大阪城ホールは、優れた音響設計を有することでも知られており、関西のクラシックファンにとっては年末の風物詩でもある「一万人の第九コンサート」の会場としても馴染み深い。
舞台面積は隣接する住友生命いずみホールよりも小さく、ステージを囲むように360°に客席が配置されているのは、1963年にオープンしたベルリンフィルハーモニーホールに代表されるいわゆるヴィンヤードタイプのあつらえを思い起こす。至る所に仕込まれている照明機材を除けば、思いの外クラシック音楽の仕様だ。だが、繰り返すがここには1万を超える聴衆が集まっており、その規模感は破格。すでに会場内には静かな期待が満ちている。

定刻を少し回って客電が落ちる。奏者たち(組員)がおもむろに不協音を重ねていく。オープニングナンバーはまさかのキング・クリムゾン「21世紀のスキツォイドマン」。ヘヴィロックとフリージャズが交差するのに合わせて照明も赤、青そして紫と波のように会場を照らしていく。いきなりの大曲でのスタートにたじろいでいると、石田は次曲の楽譜をめくり静かにカウントする。レッド・ツェッペリン「移民の歌」。そしてレインボー「キル・ザ・キング」が続く。ロックミュージックにおいて重要なグルーヴという言語化しにくい要素を、原曲にはないクラシックの語法を加えた細かいフックや、オリエンタル風味の首席奏者たちのソロ演奏を通じて石田組は五線譜に落とし込み、クラシック作品として昇華させてしまう。石田組が現クラシック界でも類を見ない演奏集団であることが冒頭の3曲で証明される。ここで石田泰尚の最初のMCが入る。「もう疲れた」とこぼしているが、どこか楽しそうだ。



続く3曲がこの日演奏されたクラシック作品。人気レパートリーでもあるバルトーク「ルーマニア民俗舞曲」はトランシルヴァニアの民謡をもとに短い舞曲が続けて演奏される。一般的には6曲構成とされており、6曲目は“速い踊り”。だが本来は“速い踊り”は2つに分かれており、石田組は7曲の構成として演奏するこだわりを持つ。7曲目に入った時のギアの上がり方は見事で、一際大きい拍手が送られた。
イギリスのラターの小品を挟み、この日が初披露となったビゼー「ジプシーの踊り」。オペラ「カルメン」の中でもハイライトのひとつとして知られているが、同一のリズムパターンに乗せて静から動へ、みるみる踊りの輪が広がっていく様はラヴェル「ボレロ」を想起させる。

前半の最後に用意されたのはこれもまたハードロック界の大作、レッド・ツェッペリン「アキレス最後の戦い」。ツェッペリン後期の傑作アルバム「プレゼンス」の冒頭を飾るツェッペリン・グルーヴの極北とも言える難曲だが、このパフォーマンスも見事だった。何よりも、本作の核である10分間のサウンドデザインがしっかりと奏者たちのアンサンブルにより再現されている(この曲については、再現できるかどうかが本当に重要で、ヴォーカルのハーモニーやギターフレーズの重なりに至るまで音響スタッフの拘りが聴き取れた)。そして、ロバート・プラントのヴォーカルを担う石田のソロは一際美しく、文句なしの名演で前半を終えた。



後半はピアソラの2作品で幕を開ける。「ビジュージャ」はこれまでも度々取り上げられてきたが、ピアソラの中では通好みの一曲として知られる。当時組んでいた五重奏団のプレイヤビリティに当て書きされたような難曲を、見事に弦楽合奏として表現する。そして、石田がソロ活動で好んで取り上げる「ル・グラン・タンゴ」が石田組としてこの日の新レパートリーとして用意されていた。ピアソラの筆による数少ない本格的なクラシック音楽のための10分を超える作品で、小規模なヴァイオリン協奏曲の雰囲気からダイナミックな弦楽合奏へと変容していく見事な構成。今後も石田組のコンサートで幾度も取り上げられるであろう重要な一作となった。ここでは近藤和明、松岡あさひら編曲者の腕が光った。

続くMCでも石田は楽しげにメンバーを紹介していく。自分が紹介される番になると袖に引っ込んでしまうチャーミングさも健在。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「炎のランナー」の映画音楽がプログラムに広がりを与える。原曲は大規模なオーケストレーションやシンセサイザーが用いられているが、この弦楽合奏団はどうして少ない人数でこれほどまでに高揚感を表現できるのだろうか。最後の主和音の斉奏が美しい。また、奏者へ絞られる照明の束や、奥行きのあるリバーブを施された音響など、技術スタッフの演出力の高さも記しておきたい。続くガンズ・アンド・ローゼズ「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」は今年からレパートリーに加わったナンバー。印象的なアルペジオによるイントロがヴァイオリン群により始まると、優しい光が差し込む。ガンズナンバーが多用された2022年のマーベル映画「ソー:ラブ&サンダー」で天から舟が舞い降りるシーンで本作が流れるのだが、その構図とそっくりだ。

石田の中東風のソロとクラシカルな弦楽四重奏に続けて、短いカウントと共にラウド&ファストのディープ・パープル「スピード・キング」が始まる。ゴールが見えてきた。クールだが熱い演奏で、奏者たちの集中力も一段と高まる。リッチー・ブラックモアの書くギターリフと弦楽合奏の相性は本当に良い。そして、いつの間にかステージの足元がスモークで覆われている。武道館公演では「紫の炎」で火柱が上がった。ならば今回はということで、ディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が最終曲に選ばれた。煙が紅い光により色付けられ、徐々にビートが重く、切れ味深く重ねられていく。石田と首席奏者たちとの拮抗するソロ回しを聴かせてドラマティックに本編が終わった。



拍手は鳴り止まない。だが石田組はなかなかステージに戻ってきてくれない。これは石田の準備に時間がかかっているのだな…と察した客席からのアンコールの拍手は一層大きくなる。ようやく戻ってきた団員たちが奏でるイントロにホールが沸く。「ほんわかぱっぱ」…もとい、レオ・ウッド「サムバディ・ストール・マイ・ギャル」はこうして聴くと本当に愉しいジャジーなポピュラー・ソングだ。そして舞台後方から恭しく登場した石田泰尚は、吉本新喜劇の座長すっちーことすち子に扮していた。カツラを被っていてもそのソロは流麗で、赤いカーディガンをおしゃれに着こなしているのがまた可笑しい。



ベット・ミドラーの代表曲「ローズ」をしっとりと奏でた後、アンコールの最後には「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」「ホワットエヴァー」とオアシスナンバーが2曲用意された。オアシスが日本から世界ツアーをスタートさせた2000年3月、ノエル・ギャラガーが本作を歌った同じ会場で改めてこの名曲に聴き入った。「”嫌な思い出にはしないで”俺にはそう聞こえたんだ」「お前が何をやっても何を言っても大丈夫だよ」という2曲の歌詞と、石田が最後のMCで伝えた「最高でした」「また会いましょう」という短い感謝の言葉が重なっていく。暖かな拍手に包まれてカーテンコールは続いた。





今回の大阪城ホール公演では、その規模と真っ向から立ち向かうプログラムと演出が用意され、石田泰尚はそれに応えてみせた。東京、大阪と続いたこのプロダクションがこれからも続いていく展望が見えたと言えるだろう。石田組はどれだけ大きな舞台に立っても石田組だった。それは武道館公演の時にも感じたことだが、武道館では「今日だからこそ」という祝祭的な気分も伝わっていた。この日の佇まいはそれ以上に自然体かつ普段通りで、各地のコンサートホールと同じ親密な空気が流れていた。一対一の音楽の対話が客席の数だけ生み出される。それこそが良質なクラシックコンサートの在り方で、石田組がこれだけの成功を収められた理由がよく分かる一夜だった。

レポート記事:小崎紘一
舞台写真:西木義和

【大阪城ホール公演 公演概要】

■タイトル:石田組 大阪城ホール公演
■開催日:2026年10月11日(日)17:30開演(16:30開場)
■会場:大阪城ホール
■主催:キョードー東京/キョードー大阪
■公式HP:https://ishida-gumi.jp

<大阪城ホール 石田組 組員>
ソロ・ヴァイオリン:石田泰尚
1st ヴァイオリン:佐久間聡一、塩田脩、山岸努、林周雅
2nd ヴァイオリン:ビルマン聡平、竹内弦、丹羽洋輔、後藤康
ヴィオラ:須田祥子、木下雄介、生野正樹、鈴村大樹
チェロ:辻本玲、西谷牧人、北口大輔、高木慶太
コントラバス:米長幸一、菅沼希望、矢内陽子





<大阪城ホール 石田組 セットリスト>

<1部>
キング・クリムゾン(近藤和明編曲):21 世紀のスキッツォイド・マン
レッド・ツェッペリン(近藤和明編曲):移民の歌
レインボー(松岡あさひ編曲):キル・ザ・キング
バルトーク(ウィルナー編曲):ルーマニア民俗舞曲
ラター:弦楽のための組曲より第 3 曲「おお、ウェイリー、ウェイリー」
ビゼー(松岡あさひ編曲):カルメンよりジプシーの踊り
レッド・ツェッペリン(松岡あさひ編曲):アキレス最後の戦い
<2部>
ピアソラ(近藤和明編曲):ビジュージャ
ピアソラ(松岡あさひ編曲):ル・グラン・タンゴ
シルヴェストリ(松岡あさひ編曲):バック・トゥ・ザ・フューチャー
ヴァンゲリス(松岡あさひ編曲):炎のランナー
ガンズ・アンド・ローゼズ(松岡あさひ編曲):スウィート・チャイルド・オブ・マイン
ディープ・パープル(近藤和明編曲):スピード・キング
ディープ・パープル(松岡あさひ編曲):スモーク・オン・ザ・ウォーター
<アンコール>
レオ・ウッド(松岡あさひ編曲):サムバディ・ストール・マイ・ガール
マクブルーム(松岡あさひ編曲):ローズ
オアシス(松岡あさひ編曲):ドント・ルック・バック・イン・アンガー
オアシス(松岡あさひ編曲):ホワットエヴァー


<石田組>
ヴァイオリニスト石田泰尚の呼びかけにより 2014 年に結成された弦楽合奏団。プログラムによって様々な編成で演奏するスタイルをとっており、メンバーは石田が信頼を置いている首都圏の第一線で活躍するオーケストラメンバーを中心に公演ごとに組員が招集される。クラシックから映画音楽、ロック・ナンバーまでジャンルを超えた名曲が毎回違うメンバーにより熱演される石田組のコンサートは、まさに一期一会の音楽との出会いを味わうことができると全国各地で大人気。2023 年 8 月のサントリーホール公演は追加公演含む 1 日 2 公演が即完。さらに追加された公演も完売し 2 日間でのべ 6000人超という、クラシックでは異例の動員数を記録。結成10周年イヤーの2024 年 11 月 10 日に念願の日本武道館公演にて 8300 人の満員の観客を熱狂させた。2025年12月にはニューアルバム『石田組2025・冬』をリリース。2026年10月11日に大阪城ホール公演を成功させた。 


<石田泰尚(いしだ・やすなお)>プロフィール
神奈川県出身。国立音楽大学を首席で卒業、同時に矢田部賞受賞。新星日本交響楽団コンサートマスターを経て、2001年神奈川フィルハーモニー管弦楽団ソロ・コンサートマスターに就任。以来“神奈川フィルの顔”となり現在は首席ソロ・コンサートマスターとしてその重責を担っている。これまでに神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。結成時から30年参加するYAMATO String Quartet、自身がプロデュースした弦楽アンサンブル“石田組”など様々なユニットでも独特の輝きを見せる。2018 年には石田組がNHK-FM「ベストオブクラシック」およびBSプレミアム「クラシック倶楽部」 で放送されその熱いステージの模様は大きな反響を呼び、2019年にはEテレ「ららら♪クラシック」で特集が組まれた。2020年4月より京都市交響楽団特別客演コンサートマスター(2025年4月よりソロコンサートマスター)を兼任。2022年に初の著書となる「音楽家である前に、人間であれ!」を刊行。ミューザ川崎シンフォニーホールにて無伴奏から協奏曲まで様々な編成で演奏する「石田泰尚スペシャル 熱狂の夜」を2022年から隔年で開催。2024年にはNHK「あさイチ」に出演し大きな話題となった。石田組は弦楽アンサンブルとしては異例の日本武道館、大阪城ホール公演を成功させ、今最も勢いに乗る存在として注目を集めている。2025年4月より横浜みなとみらいホール「プロデューサー in レジデンス」第3代プロデューサーに就任。2025年12月より川崎市市民文化大使に就任。使用楽器は 1690 年製 G.Tononi、 1726 年製 M.Goffriller。


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