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心斎橋に「市民とつくるアート」-新世界で育まれた5作品展示

プロジェクトの発案者でフリーランス・キュレーターの雨森信さん(画面右)、事務局メンバーの的場久美さん(中央)と松尾真由子さん(左)

プロジェクトの発案者でフリーランス・キュレーターの雨森信さん(画面右)、事務局メンバーの的場久美さん(中央)と松尾真由子さん(左)

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 大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室(大阪市中央区南船場3、TEL 06-4301-7285)で現在、市民とつくるアートプロジェクト「現代芸術創造事業 ブレーカープロジェクト 絶滅危惧・風景」の作品展が開催されている。

プラモデルをまちに置いて撮影した写真も

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 2003年、大阪市の新たな文化事業としてスタートしたブレーカープロジェクトは、「昔ながらの街並みや人情、たたずまい」が残る新世界・西成を中心に展開。毎年1~3人のアーティストが約半年間地域に滞在し、地域住民の生き方や生活に根ざした作品を制作している。「現代における『芸術の役割』を再考し、『芸術と社会の生きた関係』を再構成すること」を目指す。同プロジェクトの発案者でキュレーターを務める雨森信(あめのもり・のぶ)さんは「今の現代芸術は市民とかけ離れてしまっている。このプロジェクトを通して、その『垣根』をなくしていけたら」と意欲をみせる。

 これまで「街の空き店舗や商店街の中で行っていた」(雨森さん)という作品展示。同展は、それを始めて「作品をちゃんと見せられる空間」(同)で開く。雨森さんや事務局のメンバーとともに1年前から準備を進めてきた同館研究副主幹の菅谷富夫さんは「当館は『市民とともにつくる美術館』を目指している。今後も外部のキュレーターと一緒に企画展を開いていきたい」と話す。

 会場では、「高齢化や老朽化」によって「失われつつあるまちの風景」に焦点を当てた2009年と2010年の企画「絶滅危惧・風景」から、アーティスト5人の作品を展示する。「装いとコミュニケーション」をテーマに国内外でプロジェクトを展開する西尾美也さんは、数十年前に新世界で撮影された写真を再現。体形に合わせて新しく作った洋服も併せて展示する。下道基行さんは、毎日チラシの裏に四字熟語を書いている90歳の住民の作品など、「まちの知られざるクリエーター」を採り上げて紹介。

 そのほか、「まちで出会った」150人にペンライトの光を添えて撮影したトーチカの「ピカピカ in ナニワ」「プラモデルをまちに置いて撮影した」パラモデルの「極楽百景」、身の回りにある日用品を使った「地域実験プログラム」の展示風景を記録した藤浩志さんの「まちかざりの実験:デコポリ」など、素材も表現方法もさまざまな5作品が並ぶ。

 同プロジェクトを始めてから7年が経過した。「街の人が進んで協力してくれるように。認知度も少しずつ高まり、プロジェクトがやりやすくなった」という雨森さん。「街を飛び出し、美術館に展示された作品を見て、『やりたいことが分かった』と感想を残す人もいた」とも。「ここ数年で風景が変わりつつあるまちの様子を展示することで、訪れた人が見て考えるきっかけになれば」と期待を寄せる。

 開館時間は11時~19時。水曜休館。観覧料は、一般=500円、高校・大学生=300円(中学生以下、市内在住の65歳以上の人、障害者手帳を持参した人は無料)。今月21日まで。

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