
一般社団法人日本認知症資産相談士協会(JDAC/ジャダック、所在地:大阪府大阪市北区、代表理事:白岩健介、以下「当協会」)は、9月の「世界アルツハイマー月間」に合わせ一般市民を対象に「高齢期のお金・契約・詐欺対策に関する市民意識調査2026」(有効回答数403件)を実施しました。
本調査の結果、認知症などによって銀行口座の手続きが難しくなることがあると知っていた・聞いたことがあった人は86.6%でした。一方、将来に向けて「特に何もしていない」と答えた人は46.7%を占め、口座手続きへの影響が広く認知されている一方、具体的な備えをしていない人も多いことが分かりました。
また、将来のお金や契約管理に不安を感じている人は62.8%に上り、45.7%は相談先を把握していませんでした。無料相談を希望する人は70.7%で、身近な地域で専門家に相談できる環境へのニーズも浮かび上がりました。
調査は、市民が抱える高齢期のお金や契約、詐欺被害への不安と備えの実態を明らかにするために実施し、403人から回答を得ました。
【実施背景】
認知症は、医療や介護だけでなく、日常生活に必要な「お金や契約の管理」にも影響を及ぼすことがあります。認知機能の低下により、預貯金の管理や金融機関での手続き、各種サービスの解約などを、本人が判断し、進めることが難しくなる場合があります。
厚生労働省の推計によると、2022年時点で65歳以上の認知症の人は約443万人、軽度認知障害(MCI)の人は約559万人とされ、合わせて約1,002万人(65歳以上の約3.6人に1人)に達しています。
さらに2040年には、認知症とMCIの人の合計が約1,197万人(約3.3人に1人)になると見込まれています。
こうした状況を踏まえ、認知機能の低下に備え、本人の意思を尊重しながら暮らしと資産を支えることは、社会全体で取り組むべき課題となっています。
家族が本人に代わって預金の引き出しなどを行おうとしても、本人の意思確認が難しく、口座の手続きが制限されることで、必要な生活費や介護費の支払いに困る場合があります。そのため、本人が意思を伝えられるうちから、家族や専門職と資産管理の方針や必要な備えについて話し合っておくことが大切です。
当協会は「認知症への備えで、その人らしい暮らしを守る。」を理念に掲げ、市民が抱える不安と備えの実態、相談支援へのニーズを明らかにするため、前年に続き本調査を実施しました。
【調査結果サマリー】
※本リリースの%は、特記がない限り全回答者(n=403)を母数として算出しています。複数回答(MA)の設問は、各選択肢を選んだ人の割合を示しており、合計は100%を超えます。
認知症などにより、本人や家族でも銀行口座の手続きが難しくなることがあるか(n=403、単一回答)という問いに対し、「内容まで知っていた」は41.9%(169人)、「聞いたことはあった」は44.7%(180人)で、合わせて86.6%(349人)に上りました。
一方、現在行っている対策(n=403、複数回答)で最も多かった回答は「特に何もしていない」の46.7%(188人)でした。「家族で話し合っている」は30.5%(123人)、「資産や口座を整理している」は19.1%(77人)にとどまり、認知度は高いものの具体的な備えには至っていない現状が浮き彫りになりました。
認知症などにより、本人や家族でも銀行口座の手続きが難しくなることがあるのをご存知でしたか?

回答者の多くが、認知症などによる銀行口座の手続きへの影響について、知っていた・聞いたことがあったと回答しました。
現在行っている対策はありますか?(複数選択可)

口座手続きへの影響を見聞きした人が多い一方、具体的な対策をしていないという回答も多く見られました。
将来の「お金や資産の管理」への不安(n=403、単一回答)について、「非常に不安」18.6%(75人)と「やや不安」44.2%(178人)を合わせ、62.8%(253人)が不安を感じています。また、ネット銀行・証券口座・サブスク・パスワードなど、オンライン上の口座・契約やパスワードなどの管理についても、全体の68.0%(274人)が「非常に不安」「やや不安」と回答しました。
ご自身やご家族について、認知症や物忘れの不安を感じたことはありますか?

認知症や物忘れへの不安は、一部の家庭だけの問題ではなく、回答者の半数が身近に感じていることが分かりました。
将来、「お金や資産の管理」に不安を感じますか?

多くの人が将来の資産管理に不安を感じており、認知機能が低下する前から、本人と家族が資産や契約について話し合う機会を持つことが求められます。
ネット銀行・証券口座・サブスク・パスワード管理などに不安を感じますか?

高齢期のお金をめぐる不安は、預貯金などの資産だけでなく、オンライン上の口座や契約、パスワードの管理にも及んでいます。
家族・親族のお金や契約管理で「困った経験がある」と回答した人は全体の23.3%(94人)でした。
そのうち、具体的な困りごとの内容に回答した人(n=91、複数回答)の内訳を見ると、「預貯金の引き出し」が56.0%(51人)で最多となり、次いで「相続手続き」46.2%(42人)、「入院費・介護費の支払い」39.6%(36人)の順となりました。暮らしに関わる幅広い場面で困りごとが生じていることが分かりました。
ご家族・ご親族などで、お金や契約の管理に困った経験はありますか?

約4人に1人が実際に困った経験を持っており、高齢期のお金や契約の問題が、将来への漠然とした不安だけではないことがうかがえます。
【「ある」と答え、当設問にも回答した方】どのようなことで困りましたか?(回答数:91件、複数選択可)

預貯金の引き出しをはじめ、相続手続きや入院費・介護費の支払いなど、本人や家族の日常生活に関わる幅広い場面で困りごとが生じています。
認知症や相続、お金の管理について気軽に相談できる場所を知っているか(n=403、単一回答)尋ねたところ、45.7%(184人)が「どこに相談すればいいかわからない」と回答しました。
地域にあったら安心だと思う支援(n=403、複数回答)では、「無料相談窓口」が70.7%(285人)で最多となり、「気軽に相談できる地域コミュニティ」48.6%(196人)、「病院と連携した相談体制」38.7%(156人)が続きました。身近で気軽にアクセスできる相談の入口へのニーズが高いことがうかがえます。
認知症や相続、お金の管理について、気軽に相談できる場所を知っていますか?

相談先を把握できていない人が多く、制度や専門家の存在だけでなく、「まずどこに相談すればよいか」を分かりやすく伝える必要があります。
地域にあったら安心だと思う支援を選んでください(複数選択可)

無料相談窓口に加え、地域コミュニティや病院と連携した相談体制も求められており、身近で気軽にアクセスできる相談の入口へのニーズが高いことがうかがえます。
高齢の家族・知人の詐欺・悪質商法の被害や未遂を経験したと回答した人は全体の37.7%(152人)でした。その内容(n=147、複数回答)は「オレオレ詐欺・振り込め詐欺」が47.6%(70人)、「悪質な訪問販売」が34.7%(51人)でした。
また、詐欺被害を未然に防げた経験が「ある」と答えた人は全体の30.5%(123人)でした。未然に防げたケースで最初に異変に気づいた人(n=120、複数回答)は、「本人自身」が50.0%(60人)、「家族」が49.2%(59人)でした。本人への啓発と周囲の見守りの両方が重要であることがうかがえます。
高齢の家族・知人が、詐欺や悪質商法の被害に遭った、または遭いそうになったことはありますか?

「ある」と回答した方は37.7%(152件)となり、約4割の方が高齢の家族や知人における詐欺・悪質商法を身近な問題として経験していることが分かりました。
【「ある」と答え、当設問にも回答した方】どのような内容でしたか?(回答数:147件、複数選択可)

オレオレ詐欺や悪質な訪問販売などの従来型の被害に加え、ネット・フィッシング詐欺への注意も必要となっています。
【「ある」と答え、当設問にも回答した方】最初に異変に気づいたのは誰でしたか?(回答数:120件、複数回答あり)

本人自身と家族が異変に気づいた割合がともに高く、本人への啓発に加え、家族など周囲による日頃からの見守りも重要であることがうかがえます。
【自由記述から見えた当事者の声】
自由記述には、実際に直面した困りごとや、将来の資産管理への不安が寄せられました。以下は趣旨を損なわない範囲で表記を整えた抜粋であり、個人の経験や受け止めを示すものです。
- 突然の大けがから一気に介護施設へ入所することになり、短期間で対応しなければならず、大変な思いをしました。(50代・配偶者・パートナーと同居)
- 親が亡くなった際、生命保険の存在が分からず、大変苦労しました。結局、保険が切れており、負担が大きくなりました。(60代)
- パートナーとともに一人っ子のため、将来的な実家の管理・処分に、どの程度の手間や費用が必要になるのか不安を感じます。(40代・配偶者・パートナーと同居)
- 親が元気なうちに備えないと、認知症により理解力や性格が変化し、話を聞いてもらえなくなることがあります。「自分で管理できる」と言われ、話が進んでいません。(50代・配偶者・パートナーと同居)
- お金の管理を子どもに託した後、本人が子どもを疑うようになり、信頼関係に影響することがあります。介護が続く先を思うと、介護する側の心も疲弊します。(50代・配偶者・パートナーと同居)
- 認知症になると保険の契約解除などができなくなることは分かりますが、本人が嫌がるため、どのように伝えればよいか悩んでいます。(50代・親と同居または近居)
- 親が介護施設に入所した後、金融機関で親名義の預貯金に関する手続きが難しくなりました。判断基準や対応方法が金融機関ごとに異なることに不安を感じています。(60代・配偶者・パートナーと同居)
- 父が急逝した際、預貯金の引き出しなどで困りました。一人暮らしの母が認知症になった場合に備え、できる対策を検討しています。(50代・配偶者・パートナー、子どもと同居)
- 意思決定がその時々で揺らぐ軽度の認知症の方への対応に難しさを感じています。その瞬間の判断だけを本人の意思決定としてよいのか迷うことがあります。(50代・配偶者・パートナーと同居)
■調査概要
調査名: 高齢期のお金・契約・詐欺対策に関する市民意識調査2026
調査対象: 全国の男女(主に20代~70代)
回答者募集: 当協会公式SNSや協力団体のネットワークを通じて募集
調査方法: Webアンケート
調査期間: 2026年6月16日~2026年7月15日
有効回答数: 403人(40代21.3%、50代19.9%、60代18.6%など)
■ 一般社団法人日本認知症資産相談士協会について
一般社団法人日本認知症資産相談士協会(JDAC)は、認知症に伴う資産管理の課題に備えるため、法務・税務・医療・保険・行政などの専門領域を横断する知識や経験を生かし、人材育成、啓発、相談支援に取り組んでいます。お金や不動産だけでなく、大切な人とのつながりや暮らしの選択肢も資産と捉え、本人の意思を大切にしながら、認知症に備えるための知識や方法が広く知られる社会の実現を目指しています。
所在地: 大阪府大阪市北区西天満三丁目10番3号 ARK西天満ビル1階
代表理事:弁護士・白岩健介