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南堀江で気鋭アーティストが個展-「体操服姿の少年」モチーフに

「結果的に期待を裏切ることになってしまっても、自分の頭の中にあるものを形にしていきたい」と話す大江慶之さん

「結果的に期待を裏切ることになってしまっても、自分の頭の中にあるものを形にしていきたい」と話す大江慶之さん

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 体操服姿の少年をモチーフにした立体作品で注目を集める大阪在住のアーティスト・大江慶之さんの個展「プレイ」が現在、南堀江の現代美術ギャラリー「TEZUKAYAMA GALLERY(テヅカヤマ・ギャラリー)」(大阪市西区南堀江1、TEL 06-6534-3993)で行われている。

骸骨を被せた少年の頭に1本ずつ花を挿していった「flower head」

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 1980(昭和55)年大阪生まれの大江さんは、2003年に成安造形短期大学造形芸術専攻科を卒業。もともとデザインや絵画など平面作品を手がけていた大江さんだが、「自画像ばかりを描いていた」という作風に行き詰まりを感じ、「フレッシュな気持ちを取り戻すため」にたまたま始めたのが立体作品だったという。

 「知識のないままいきなり始めた」というものの、FRP(繊維強化プラスチック)を使った少年、本物と同じ素材を使った体操服や帽子、靴などの小物はすべて手作業で制作している。「当初はリハビリのような感じだったので、『これからは立体』と思って始めたわけではなかった。それが今では4年近くになる。今後はバランスを取りながら、立体と平面の両方を手がけていきたい」と話す。

 同展では、制作に1年を費やしたという新作4点を含む立体作品7点・平面作品4点の計11点を展示。飛び縄を使って「電車ごっこ」をする4人の少年の頭を大量のガーベラで覆った「train」。少年の頭に骸骨を被せた「mask」。「カーブミラー」の頭を持つ「ミラー少年」。1匹のヤモリとそのしっぽを切り取った少年の手をかたどった「持ち主」など、「今回はあえて顔をふさいだ」という大江さんの言葉通り「顔のない」少年たちが並ぶ。

 1年間、大江さんと話し合いながら準備を進めてきた同ギャラリー・オーナーの松尾良一さんは、「無垢な瞳で見つめる少年の評判がとても良かったので、大江さんから『顔のない作品で個展をしたい』と相談を受けたときは少し驚いた」と振り返る。「作品を気に入ってくれるのは本当に嬉しい。でも、作品は自分の生んだ子供のようなもの。結果的に期待を裏切ることになってしまったとしても、いつも自分の頭の中にあるものを形にしていきたい」と話す大江さん。

 会場に入ると目に飛び込んでくる骸骨や花、飛び縄、しっぽのちぎれたヤモリ…。大江さんが生み出す無表情の少年たちは、そうした装飾を施して始めて完成する。「人が生きている姿をありのまま表現すること。それが作品づくりの大きなテーマ。そこに表情を加えると、物語の一部のようになってしまったり、ノスタルジックさが加わってしまう。それを避けたいので、表現したいことや自分の思いはオプション(付属品)に託している」と大江さん。例えば、花は「生命力を表すもの」、死を彷彿させる骸骨は「生きている限りみんなが持ち合わせているもの」、体操服は「日本人を象徴的に例えたもの」として少年に添えられている。「作品が鏡となって、自分との対話を生むきっかけになってくれれば」とも。

 開催時間は11時~19時。日曜・月曜・祝日定休。入場無料。4月30日まで。

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